は恋人たちの為に





「あちー…」




縁側から見える
緑の稲を眺めながら。

額に浮かぶ汗を拭う。


風に大きく揺れる稲と共に、
金色の髪がサラサラと流れた。




「夏なんてなけりゃいいのに。なー菊」

「そんな無茶な」




柔らかく笑いながら。
手にしたかき氷をアーサーに渡す。


今日の味は。

抹茶のシロップに小豆と白玉を
乗せた和風仕立てだ。




「だって涼しい方がいいだろ?」




サンキュ、と云って
それを受け取るアーサー。


その豪華さに感動しつつ。

シャクシャクと
スプーンを氷に立てて。

小豆と絡ませながら口に運ぶ。




「そんなに急いで食べると」
「っ‥‥!!」

「あぁ、ほら」




おそらく頭に氷の
冷たさが響いたのだろう。

顔を歪めながら額の横を叩く姿に
思わず笑ってしまった。




「…そうですねぇ。でもこの暑さが無ければ、涼しくなったのも分かりませんよ?」




かき氷の美味しさも、
分からないかもしれませんね。


そう云いながら。

程良い弾力のある白玉を、
スプーンに乗せて持ち上げる。




「──暑い夏は秋の為に。緩やかな秋は冬の為に。厳しい冬は春の為に」




折角の四季なんですから。
それぞれを楽しまなければ。



太陽に輝く白玉を
目を細めて眺める菊に。

アーサーはふと、
疑問を口にする。




「じゃあ春は?春は暑い夏の為にあるのか?」




それじゃ上手く繋がらない
とぼやくアーサーに。

菊は意地悪そうに笑いながら。




「春は、内緒です」




と云って。


頭の上に疑問符を浮かべる
アーサーを横目に。

嬉しそうに白玉を放り込んだ。




(なにニヤけてるんだよ)
(いいえ、なんでも)





†end

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