「──うわぁぁあぁアァ…ッ!!」



叫んだ声が鼓膜を揺らす。
喉は痛くて訳も分からず身を捩る。




「ロヴィ!!」




瞬間声がして。
誰かが俺の名前を呼ぶ。

揺さぶられて目を開ければ。
そこには心配そうな顔をしたアントーニョノがいた。



「あ‥、アントーニョノ‥?」



見渡せば。
そこは何の変哲もない自分の部屋で。

炎も、アントーニョノの亡骸も
転がってはいなかった。



「大丈夫か、ロヴィ。うなされとったみたいやけど」



起きて尚震える俺に、
アントーニョノが背中をさする。

これが現実だと分かった時には。
目から大粒の涙が零れ落ちていた。



「…っう、ひっく‥ッ」

「よしよし。怖い夢でも見たんか?」



胸元に縋りつく俺を。
暖かい手の平で包み込む。

そのままあやすように
背中を叩かれ。

嗚咽を繰り返しながら
涙を零した。


あれは過去の記憶か。
それとも未来の光景か。


アントーニョノの姿が
脳裏を過ぎり。

震える指先で裾を握る。




「ロヴィ、親分が傍に居るからな。大丈夫やで」




涙でぐしょぐしょになった
俺の顔を拭いながら。

にこりと笑いかけられて。


また一粒涙を流した。




(お願いです神様。

これが現実になるのなら。

どうか過去の記憶であって下さい)






†end

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