美歌109番




"Silent night,Holy night"
静かな夜 聖なる夜

"All is calm,All is bright"
全ては静かで 全てが光り輝く





「ハレルヤ!!」



脳内で巡っていた思考を全て取り払うように、ひとり大声で叫ぶ。

今日は12月25日。
いわゆる"クリスマス"とかいう日らしい。



「うるせぇ。いきなり叫ぶんじゃねぇよ」

「あ、ごめん」



叫んだところで、ベッドの上に座って雑誌を読んでいた亜久津に怒られた。

と同時に突き刺さる鋭い視線。

ここは亜久津の家なので、大人しく謝っておくことにした。



「で、ハレルヤが何だって?」

「今日はクリスマスだからね。世のカップルに絶賛のセリフを送ってみた」

「そうかよ」



素っ気ない態度。

俺はムムム、と唇を尖らせ、床に座ったままベッドに顎を乗せて亜久津を見上げた。



「亜久津は寂しくないの?こんな日に野郎と2人っきりなんて」

「お前が勝手に押し掛けたんだろ」



話を容赦なく切り捨てられてしまった。

冷たいなぁと思いながらも、そんなのは馴れっこなので気にしない。

他の人はここで怖がってこれ以上踏み込もうとしないけど、残念ながら俺はそんな甘っちょろい相手じゃなかった。



「だってさぁ、クリスマスだよ?街中イルミネーションだらけでカップルがひしめき合ってるんだよ?そんなの見たら、寂しくなるじゃん!」

「それでここに来る意味が分かんねぇ。つか見なきゃいいだけだろ」

「あっくんヒドいッ!」



わぁっと、ベッドに顔を埋める。

ヒドいよ、俺せっかく来たのにずっと雑誌読んでるし、反応薄いし冷たいし、あっくん俺のこと嫌いなんだっ

と言った辺りで、亜久津のため息が聞こえてきた。


見れば、雑誌をベッドに置いて、人差し指でこっちに来いと合図をする亜久津。

怒っている雰囲気ではなかったので、おずおずとベッドに上がり、亜久津の隣にちょこんと座った。




「テメェはめんどくせー奴だな」




少し口元を緩ませて、そのままキスをされる。

全くの無防備だったので、無意識に体が逃げようとしたけど、それよりも先に亜久津の手が肩を掴む。

仕方がないので応えるように目を閉じれば。何度か角度を変えてキスをした後、そのまま押されてベッドへと押し倒された。



「"寂しかったから会いに来た"。素直にそう言やいいんだよ」

「だって、そう言ったってあっくん冷たくあしらうだけじゃん」



面倒なのは、あっくんの方だ。


挑発するように笑って、俺に被さる亜久津に言えば。彼は眉間に皺を寄せて、"上等"とでも言うように笑ってみせた。



「テメェ、今の状況分かってんのか?明日立ち上がれなくなっても知らねぇぞ」



亜久津からの宣戦布告。
これは多分、言葉通りになるだろう。

首筋を舐め上げ腹部を撫でる手にゾワリと震えながら。俺はひとり、街で流れていた歌を脳内で口ずさんだ。




"With tha dawn of redeeming grase"
救いの恩恵の夜明けをたずさえて

"Jesus Lord at Thy birth"
主イエス 誕生




†end

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