ぁるい月の真ん中で





まぁるい月の真ん中で、
2人で手を繋いで歩こう。





「ねぇ見て悠太、満月だよ」

「ホントだ。きれいだね」




本屋に寄り道をした帰り道。

すっかり暗くなった堤防沿いを、月明かりに照らされながら並んで歩く。




「月って、地球から少しずつ離れてってるらしいよ」

「へー、さすが悠太先生。博学ですね」




見上げれば、そこには物心ついた頃からそこにいた月。

その月がいつかは見えなくなってしまうと言われても、正直これっぽっちも実感がわかなかった。




「まぁ、何百年後、何千年後の話しだからね」




隣を見れば、そこには物心ついた頃からそこにいた悠太。

どこへ行くにも何をするにも、いつも2人一緒だった。




──きっと悠太も、いつかは離れてしまうのかな‥




悠太の手には、さっき本屋で買っていた受験勉強の本。

それを横目で見ながら、オレは少し俯いて、アニメージャが入った袋を揺した。





「…悠太は、月みたいにならないでよ」





立ち止まって、小さく呟けば。
1、2歩先に進んだ悠太が、それにつられて振り返る。


俯いた顔に、影が落ちる。

少し気まずくて、悠太の顔が見れなくて。オレは足元にあった小石を、爪先で軽く転がした。




「……ばか。行くよ」




笑ったような、呆れたような。
曖昧な表情を見せる声音に顔を上げれば。

歩き出した悠太が、後ろ手に手をひらひらさせている。


おいで、と言っているようで、素直にそれを追い掛けて手を繋げば。

物心ついた頃からのように、また隣には悠太がいた。





まぁるい月の真ん中で、
2人で手を繋いで歩こう。

そうすればきっと、
ずっと一緒にいられるから。





†end

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