甘い甘いチューペット
祐希は甘え上手だ。
「悠太ー、今日やる番組録画しといてよ」
風呂上がりにリビングへ寄ると、ソファーの上でチューペットを食べながら、だらしなく寝転がる祐希に手招きされる。
何かと思えば、随分と上から目線なお願い。
「それくらい自分でやりなよ」
「えー、だってリモコン遠いんだもん」
机の端に置かれたリモコンへと手を伸ばす祐希。
体を起こせば届く距離なのに、そもそも取る気すらないのだろうか。
そのまま手をぶらぶらさせて、パタンと床へと落ちる。
「やる気ないでしょ」
「そんなことないよ。やれる気がしないだけ」
「それをやる気がないと言うんだよ」
やれやれ、と言って、結局リモコンを取るのはオレの方。
つくづく甘いと思うけど、こうしてしまうのは昔から。
「流石お兄ちゃん。優しいなあ」
「持ち上げたって嬉しくないよ」
ソファーの端に座って、ぽちぽちとお願いされた番組を録画する。
この様子だと今まで録画した番組もろくに整頓してないだろうから、後で見終わってるやつは消しておこう。
正直そこまでする必要はないけれど、気になってしまったのなら仕方がない。
ほんと、つくづく甘い兄だ。
表情はそのままで、心の中でため息を吐いたとき。
「はい」
祐希から、食べかけのチューペットを渡される。
「…なにこれ」
「チューペット」
「いや、見れば分かるけどさ」
なんでこれ?
しかも食べかけ。
「録画してくれたお礼」
そう言って、口の中へと無理やりチューペットを押し込む祐希。
いるなんて一言も言ってないのに。
「…いらなくなったんだ?」
「違うよ、お礼」
ぷー、とほっぺを膨らませながら、またソファーにだらりと寝転ぶ祐希。
間接ちゅーと嬉しそうに呟いてるけど。いや、君は思春期真っ盛りの中学生ですか?
「ありがと」
そう言ってふにゃらと笑う君に、さっきのため息が嘘のように消える。
──あぁ、やっぱりオレは甘い。
甘いチューペットを食べながら、祐希の隣で身体を沈めた。
†end
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