霖の涙




初めて出会ったときの貴方は、
少し不機嫌そうで。

周りから何か言われながらも。
自然と輪の中に入ってきた。




「初めまして」




最初に交わした言葉はそれだけ。

どんな人かも分からないまま。
あとは視線の端へと流すだけだった。




「菊」




私の名前を呼ぶようになったのは、
あれから幾つかの時が経った頃で。




「俺、アルの話、受け入れるよ」





珍しく神妙な面持ちで。
そう、呟いた。




「…え?」




床に落ちた言葉は。
酷い冗談にしか聞こえなくて。

手にした湯呑みが。
中の白湯と共に揺れる。


目を見れば。
寄せた眉に、合わない視線。




"嫌だ"




上がる心拍数に。
胸が締め付けられる。


咄嗟に出てきた言葉は、
音にする事も出来ず。

私の口内を上滑りした。




「ごめんな」




一方的に告げられる別れ。


私はまだ何も
伝えれていないのに。

貴方は振り払うかのように
私から離れていった。



あの時輪の中に入ってきた貴方は。

今ではすっかり私の中にまで
入ってきていて。


視線の端に追いやろうとしても。
何時の間にか目が追っている。



それだけの月日が流れ。
それだけの想いが溢れていたのに。

それなのに貴方は、
私から離れると言うのですか。




「…何故、謝るんですか」




ふとした時に思い出すのは。
貴方と過ごしたあの笑顔。




「諦めれるわけ、ないじゃないですか」




ふとした時に涙するのは。
貴方に言われたあの言葉。




「私はまだ、貴方のことを…」




女々しいのかもしれない。
往生際が悪いのかもしれない。



それでも私は。

貴方のことが好きでした。





†end

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