輪廻
僕は君の事を知っている。
君を初めて見た時から。
君の名前を知っていた。
「初めまして」
そう言う君に。
僕は困ったように見つめ返した。
初めてまして?
君はもう忘れてしまったの?
お腹の中に居たときは。
あんなに沢山喋ったのに。
僕たち二人は双子だった。
一緒に笑い一緒に眠り。
一緒に目を開ける筈だった。
なのに君は僕より先に流れ落ち。
此処には僕だけが取り残された。
暗かった寒かった寂しかった。
会いたい会いたいと呟きながら。
目を開けるのを待っていた。
「私があなたのお母さんよ」
そう言って笑う君に。
僕は涙を流した。
あの頃とは違う君。
僕を忘れてしまった君。
でもまた君が
僕の傍に居てくれるなら。
初めましてでも構わない。
『もう、ひとりにしないでね』
聞こえてくる心音に。
僕は安心して目を閉じた。
†end
Poem