驚いて止まっていると。
上に被さっていた人が。
徐に上体を起こす。
よく見れば。
そちらの方も、大会で
目にした事のある顔だった。
「えっと、日吉くん‥だっけ?」
「はい。千石さん、ですよね」
話は先輩から常々。
そう言ってこちらを見る瞳は
すごく妖艶で。
整った顔立ちから、
男でも綺麗だと感じてしまう。
「‥あ。お、お邪魔だったよね!ごめん直ぐ居なくなるからっ」
止まった会話を
取り繕うようにまくし立てて。
慌てて部室を出ようとしたら。
「待って」
扉に掛けた手に絡む。
細くて柔い指。
いつの間に背後に来たのか。
耳元に唇を寄せるジローくんは、
普段の雰囲気とはまるで違っていて。
「ちょっとだけ、遊ぼうよ」
そう言って弧を描く瞳は。
日吉くんよりも妖艶に見えた。
→