よりも憎しみを




恋なんて。
酷く不安定な感情だ。


好きだと言って
盛り上がっておきながら。

飽きてしまえばそれでお終い。


流行りと同じで
次から次へと移っていって。

後に残るのは何もない。





ギシギシと跳ねる
ベッドのスプリング。

何かがぶつかり、
それを追うように響く
湿りを帯びた声。


薄暗く感情の無い部屋に反響する
不可解な音に。

粗い呼吸が交じり合う。



いつものマフラーは
菊の手に。

着ていた服は床の上。


一糸纏わぬ綺麗な身体に
口付けて。

己の欲望を突き立てる。




「ア…っ、や‥ぁ」




ガクガクと震える
膝を掴んで。

羞恥に顔を赤らめる菊を
上から眺める。




「もう、やめて‥っ」

「なんで?」




律動の度に愛くるしく
震える菊に笑いかけて。

わざと動きを速くする。




「!‥ゃ、だ…ァっ」




途端に跳ねる背中。


揺れる腰は逃れる為か。
それとも自分を誘っているのか。




「淫靡だね‥っ」




愉しくて。
追うように奥まで攻め立てて
やれば。

一段と声を荒げて
呆気なくイってしまった。




「早いよ、菊」




繋がった儘。
己の精液で汚れた菊の頬に
指を絡める。


まだ仄かに温かいそれは。

つうっと糸を伸ばし。
月明かりに厭らしく光ってみせた。




「‥‥何故…」

「うん?」

「何故、こんな事を…」




顔を背けた儘。
消え入りそうな声で訴える菊。


その目からは陵辱の涙。
躊躇いがちに落ちて
精液と一緒にシーツを濡らす。




「何故って、菊が好きだから」




さも当たり前のように言い放ち。
零れた涙も指で掬う。


それを口元に運んで
舐めとれば。

口の中で苦いのと
しょっぱいのが混ざり合って。
何とも言えない味がした。




「私は、嫌いです‥っ」




菊にしては強気な言葉で。

睨むように僕を見て
唇を震わせる。



それを眺めながら
困ったように笑って
腰を引けば。

途端に反応する身体。


イった後で敏感になっているからか。

もう頭を擡げている。




「じゃあ。嫌いって言うなら、この反応は何?」




それを人差し指で弾けば。

漏れそうになる声を
咄嗟に飲み込む菊。



その姿が可愛くて。

もっと見たくて
律動を再開する。



単純作業の行為。

その一つ一つに喘ぎが混ざり。
僕はたまらず笑みを零す。




──嫌い?


そんなこと知ってる。

だってそうなるように
仕向けたのは僕だから。




「やめ…っ」
「止めない」




こうやって嫌がる君を
無理矢理犯せば。

君は嫌ってくれるでしょ?




「…っ嫌い‥‥私、はッ‥嫌いですっ」




理性を保つ為か。
愛嬌を隠す為か。

必死に僕への恨みを
零す菊。




それでいい。


好きなんて曖昧な言葉。
恋なんて曖昧な感情。

菊にはいらない。


君にはそれ以上に
想って欲しいから。

それ以上に
刻んで欲しいから。



だからお願い。




「その気持ち。忘れないでね、菊」




僕をもっと憎んで。





†end

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