一昨日の事だった。



その日は雲が重く。

今にも雪がちらつきそうな。
そんな寒い日だった。



俺はブンちゃん家の
門の前に座って。

彼をじっと待っていた。


裏通りだからだろうか。

帰宅時間だというのに。
余り人が通らない。




「ジロー…?」



ふと頭上から声がして。
俺は反射的に顔を上げる。


そこには。

驚いた表情で俺を見る
ブンちゃんの顔が。



「あ、お帰り〜」

「おま…ッお帰り〜じゃねぇだろ!」


叱咤されたと思ったら。

いきなり体を
抱き寄せられた。



「馬鹿かお前、こんなに体冷たくして…」


そう言って俺を強く
抱き締める。


寒かっただろ。

そう言われて。
俺はふと違和感を覚える。



抱き締められているのに。
暖かく…ない。

それどころか。

寒くもなかった。



身体が浮遊しているような。

何かが欠落してしまった感覚。



ここは寒いのか。
それとも暖かいのか‥



息を吐けば。
白い物がフワリと漂い。

澱んだ雲の中へと
溶けていった。







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