その吐息に慈しみを
──オイ、日吉。今すぐジローを探してこい。
部活の合間、休息をとる俺に跡部さんがそう言ってきた。
面倒臭い。
頭に浮かんだ言葉を少し表情に浮かべつつ、俺は素直に返事をして立ち上がる。
何故あんな人が氷帝テニス部のレギュラーなのかと不満を抱くも、芥川先輩の試合姿は何度も見ているので大きな声では言えない。
"天才肌"
努力を重ねるタイプの自分には羨ましい言葉だった。
「ここにも居ない、か」
昼寝の定位置となっていた広場のベンチには芥川先輩の姿はなく、代わりに冷たい風が髪を揺らした。
もしかしたら校舎内かもしれない。
厄介だな、とため息を吐いて横を向いた先。木の裏側の芝生の上に誰かの足が見える。
なんとなく予想が付いて近付いてみれば。
そこにはスヤスヤと眠る芥川先輩と、それを眺める名字先輩が。
まるで逃げた飼い猫を探していたら、他人の膝の上で暢気に寝ているのを発見したときのような気分。
「‥──名字先輩」
半場呆れながら声を掛ければ。
芥川先輩を膝枕していた名字先輩が顔を上げて、少し恥ずかしそうに、困ったように笑った。
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