風通る丘の上





ぽかぽか陽気の午前中。

春風の吹くあの丘に。
あの人に会いに私は走る。



今日もあの人はいるかしら?



あの大きな木の下で。

きっといつものように
寝ているわ。



私はゆっくり歩き始める。

あの人がいると
分かったから。


やっぱりね。
あの人は今日も眠ってる。



何の夢を見てるのかしら?



私はそっと
ほほにすり寄る。

あなたの香りが
ふわっと近付く。




今日も会いに来ましたよ。




耳元でそっと
囁いた。





「ん・・・?」




あの人がゆっくりと
目を開く。



おはよう。



私はあの人に
笑いかける。




「やぁ、君か〜」




眠そうな目を擦りながら。

あの人はゆっくり
体を起こした。


金のクセ毛がさらりと流れる。



「今日も来てくれたんだね」



そう言って。
私の頭を撫でてくれた。



私は頬が
赤くなるのを感じて。

急いであの人に背を向けた。




「あれ〜?今日はなんだかご機嫌ナナメ?」




あの人が心配そうに
私を見つめる。



ごめんなさい。
そういう訳じゃないんです。



私はあわてて隣に座った。




「?」




あなたは困ったように
首をかしげる。



気にしないで下さい。
なんでもないですから。




私はあの人の手に触れた。

それが今の私の
精一杯の甘え方。



あなたは眠そうに笑って
私を撫でた。



やさしく。

ゆっくりと。





なんて優しい手なんだろう。




ねぇ。

あなたは愛しい人にも、
こうやって触れるの?




ぼぅ・と考えていると。

いきなりフワッと
抱き上げられた。


私はびっくりして
あの人を見つめる。





「今日は天気もE〜し、一緒にお昼寝しよう!」




そう言って私に笑いかけ。

私を抱いたまま
あの人は仰向けになった。



あなたの香りに包まれて
私の頬は一層赤らむ。





「おやす─…Zzz」




私の意見は置いてけぼりで。

あの人はもう
眠ってしまった。




あぁ。
本当に勝手なんだから。




ため息をついて。
微笑んだ。




そんなあなたが
好きだから。

だから私も
目を閉じる。


あなたの呼吸を
感じながら。

私はゆっくりと
幸せに浸る。





春風が吹いて。


木の葉の音が
二人を包んだ──…







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