ちょい悪オヤジの三原則。
酒・煙草・女遊び。

私の父は、この三つのうちの最後の条件、女遊びが酷かった。


酷いと言っても、家に連れ込むわけでもキャバクラに入り浸るわけでもないが。

道行く女性に鼻の下を伸ばし。
好みの人には声を掛けてお茶をしようと画策する始末。


娘にはバレないようにやっているつもりらしいが。
残念ながら世間は狭い。

そんな話は友人から直ぐに回ってくる。



そんな訳で。

例の如く女の話を耳にした私は、仕事から帰ってきた父に詰め寄り。

変にはぐらかす父に嫌気が差して、いつものように家を飛び出したというのが事の始まりで。
ある意味終わりでもあった。



それにしても、年頃の女の子がいるというのにそんな醜態を晒して。
恥ずかしくないのだろうか。


あぁホント──…




「どういう神経してんのよ!!」

「うるせぇ!」




叫んだところで、正面からクッションが飛んでくる。

飛ばした本人、銀髪で強面な彼は、床に寝転びながらバイクの雑誌を眺めていた。




「痛いよあっくん」

「知るか。テメェがいきなり叫ぶからだろうが」




亜久津仁、38歳。

父、清純の同級生。


テニス繋がりで知り合ったらしいが、私から見ればとてもじゃないが大人しくテニスをやる人間には見えない。


年を取っても衰えない殺気。

きっと昔はかなりのやんちゃ者だったに違いない。



取りあえず飛んで来たクッションを投げてみる。

片手で軽々と弾かれ、雑誌の端から睨まれた。


怖かった。







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