strands





(聞いてよブンちゃん!私神奈川に家を建てたわ!)

(はい!?)



爽やかな朝の陽射しを浴びながら、伸びやかに上を向く春の花たち。

花壇から見つめる先には緑が鮮やかなテニスコートがあり、その上を黄色いボールが跳ね上がる。

軽快な音を幾つも重ねながら飛び交うボールたちに。




「全く貴様等はたるんどるっ!!」




突然怒濤の声が突き刺さった。


それに驚いた部員たちはボールを追う足を止めて、皆一様に部室へと目を向ける。

恐ろしげに見る者、好奇の目を向ける者。

それぞれ内心は違うようだが、頭の中に浮かべた人物は満場一致のようで。皆が皆、苦虫を噛み潰したような顔をした。



「ちょっと、そんなに大きな声を出さないでくれる?」

「貴様は己が犯した事の重大さが分かっておらん!」

「なによ。ちゃんと仕事はしてきたじゃない」

「それ以前の問題だたわけがっ!」



部室の扉を開ければ、鼓膜に二人の声がめり込んでくる。

それを指で遮断して、仁王は呆れた表情で口を開いた。




「二人ともいい加減にしんしゃい。外で部員たちが怖がってるぜよ」




投げ掛けた先。

言い合っていた一人、立海テニス部副部長の真田弦一郎が、ぐぬぅと喉を鳴らす。

それとは対照的に、同じく言い合っていた一人、立海テニス部マネージャーの藤乃麻帆は、素知らぬ顔でそっぽを向いた。



「やれやれ。麻帆も少しは折れたらどうじゃ」

「イヤよ。だってちょっと縛っただけじゃない。私、何も悪いことしてないわ」

「それが問題なんだと思うがの…」



そっぽを向いていた麻帆が、今度は頬っぺたを膨らませる。

元々が可愛い顔立ちなだけあって、その仕草は中々の破壊力がある。

天然なのか計算なのか。
それに惑わされた部員たちは、密かに麻帆の事を"小悪魔"と呼んでいた。



「ブン太も何か言ったらどうじゃ」

「んー?あぁー…」



壁にもたれ掛かっていたブン太に顔を向ければ、何とも間の抜けた声を返される。

真田にも臆せず突撃していく麻帆の操縦桿を握れる数少ない人物だと言うのに。争い事が面倒な性格のせいか。こういう時は大抵我関せずといった顔をして場を眺めている。


"丸井先輩は腑抜けなんすよ"


少し前に聞いた、生意気でワカメ頭の後輩の言葉を思い出した。








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