×××戦争





「おい!折原臨也と名字なまえがまたドンパチやりだしたぞ!」

「えぇ!?早くこっから離れないとやべぇじゃん!」

「巻き込まれたくない奴は逃げろ!!」




平和な日常に突如現れた喧騒。

波紋のように広がるそれを、追うようにして私は走る。




「どこまで逃げるのかなぁ、なまえ!」




数メートル後ろから、私を呼ぶ声が聞こえる。


振り返ってはいけない。

何故なら、振り返ればそこにあるのは絶望だけだから。



逃げ惑う人々を視界の端に捉えながら、更に加速しようとした瞬間。

風が、後ろから鋭く突き刺さるのを感じる。




「…っく」




耳に届くのは高い金属音。

火花を散らせ、私の目の前で制止する。




「あぁ、やっと俺の方を見てくれた」




そう言って嬉しそうに笑うのは、先程まで私を追い掛けていた男。


華奢な身体から伸びる腕に、折り畳み式のナイフを光らせ。

殺気を切り裂くように振りかざした私のナイフを、片手一本で止めてみせた。




「相変わらず物騒だねぇ。女の子がナイフなんか持つもんじゃないよ?」

「物騒はどっちだ。毎回毎回私を追い掛け回して」

「仕方ないよ。好きなんだから」

「ほざけ」




男と真っ向から力勝負をする程、自分の腕力を過信していない私は。

臨也の力を逆手に取って、左足を後方にずらしてからナイフを引き、相手のバランスを前方へと崩す。

そしてそのまま片足を滑り込ませ、仰向けに身を捨てて臨也を頭越しに投げた。




「さすがなまえ」




他人事のように言う臨也は、受け身を取って一回転し。

片腕だけで勢いを殺して、何事も無かったかのように手を払いながら立ち上がる。


その間に体勢を整えた私は。
ナイフを逆手に構えたまま、臨也の身体目掛けて走り出した。







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