折原なまえ。
来神学園2年。

名字からも分かるように、彼女は現在の来神学園で1・2を争う問題児、折原臨也の妹にあたる。

年は臨也の一つ下だが。顔は双子と間違われる程瓜二つで、臨也の髪を肩まで伸ばし、セーラー服を着せればまさに彼女だった。




「何をしたのだなんて。やだなぁ、まるで俺が何かしたみたいじゃないか」

「何かしたから追いかけられてたんでしょ」

「ちょっとナイフで刺してみただけだよ。新しいナイフの切れ味はどうかと思ってさ」

「…そのまま殴られて顔面グシャグシャになれば良かったのに」




余りにも常識離れした理由に、自分の兄ながら溜め息も出ない。

庇わなければ良かったと、臨也が身を潜めていた階段下の倉庫に目をやった。




「シズちゃんが悪いんだよ。あんな万国ビックリ人間ショーみたいな身体して。あんな奴が同じ人間かと思うと殺したくなるね」




まぁ、そのうち殺すけどさ。

そう付け足してポケットから取り出したのは、先程臨也を追っていた金髪──平和島静男を刺したというナイフだろうか。

刃は先の方で不自然に折れ曲がり、折り畳み式だというのにそれが邪魔をして意味を成さなくなっている。

確かに万国ビックリ人間ショーだな、と。なまえは仕舞われたナイフをポケット越しに見つめた。




「それじゃ、俺を探して戻ってきたシズちゃんに見付かるのも面倒だし。俺は戻るよ」

「逃げる、の間違いじゃなくて?」

「状況が変われば言葉もまた変わってくるのさ」




手摺から身体を離して、もと来た廊下を揚々と歩いて行く臨也。

自分も教室に戻ろうと足を踏み出したら、思い付いたように振り返った臨也が口を開いた。




「ねぇなまえ。今日の晩ごはん何?」

「…今日はお兄ちゃんの当番でしょ」

「あれ?俺の当番は昨日だった筈だけど」

「昨日は静男さんと追いかけっこしてて帰って来なかったじゃない」




苛立ちを含めるわけでもなくただ事実を述べれば、臨也がワザとらしく手を叩く。

あわよくばそのまま無かった事にしてしまおうと思っていたらしい。

お腹が空いたと泣きわめいていた妹たちを思い出して、なまえはポケットに入ったナイフがそのまま臨也に刺さらないかなと期待した。




「それなら今日は、俺が可愛い妹たちの為に愛を込めた手料理を食べさせてあげようじゃないか」

「はいはい。期待しないで待ってるよ」




何処からともなく聞こえてきた足音に、今日の晩ごはんは何にしようかと考えた。





†end

その後

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