アレのあと。ちょっとエロい。悲恋。








 「…寒い」
 「?…どうした、毛布足りないか?」
 「ううん、大丈夫。ね、ぎゅってして」
 「…仕方ないな」

 二人で被った毛布の中でネジがあたしを抱き締める。直に触れた肌は汗ばんでいるせいでそこそこに冷たい。でも触れた瞬間じんわりと熱くなる。そのうち毛布を蹴っ飛ばすのだろう。その瞬間がとても好きだ。
 
 「ね、ちゅーして」

 その流れのまま強請れば噛みつくようなキスが降ってくる。しっかりと合わさっているけれど噛み合わない唇の中で、互いの舌が蛇のように蠢く。上顎、あたしはなぞるのも好きだけどなぞられるのはもっと好きだな。彼もわかってるみたいで上顎をざらざらと舐めあげてくる。あたしは彼の下の歯列をおかえしと言わんばかりになぞると、彼の吐息をふっと聞いた。どれくらいかして、やがて唇を離す。おかしくって笑った。

 「もう一回戦する気?」
 「まさか。お前、こういうのが欲しかったんだろ?」
 「それ言っちゃ駄目なやつ」
 「お前相手なら言っても構わんだろ」
 「そーですか、」

 ぎゅっと胸のなかに収まっておく。こういう関係になってもう半年がたつ。はじめはお酒のノリだった。ノリという言葉のなかにはもちろん本気も混じってた。九割くらい。九割くらい本気。一割くらい、遊び。そのくらいの感覚じゃないと、心が壊れそうだったから、そういうことにしている。
 ネジはもちろん真面目な人だったから、あたしの誘いをはじめは拒否した。でも、彼も思春期そこそこの青年だ。堅物でも口説けば落ちる。
 それには正直ちょっと幻滅した。いっそのこと「ふざけるな」と怒鳴り付けてほしかった。真剣に軽蔑されたかった。でもそうならなかった。そうならなかったのは、彼があたしのことをたいした女とは思ってないから。
 それでもいい。そういう恋で、いい。いいからあたしはこうして彼に抱かれている。

 「ねぇネジ、……次、いつ会おっか」
 「…さあ、いつだろうな」
 「お互い任務だしね。まあ、また日付があったら教えてよ。どうせ修業か瞑想でしょ」
 「まあな。…お前はそれでいいのか?」
 「…何が?」

 一瞬どきりとした。でも、すぐに「なんでもない」とごまかされる。期待が萎む。

 「…そ」

 ネジの腕のなかからごろりと外れて天井を見る。馴染み深くなってしまったネジの部屋の天井は今日も冬景色みたいに殺風景に見えた。まあ、殺風景じゃない天井なんて知らないけど。

 「……寒い、」






 まあネジもヒロインが好きだからこういう関係にずるずるとなったのではと推測できるお話でした。拍手ありがとうございます!
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