良い兄さんだったから頑張って書いてみた〜午前4時の微妙なテンションでお送りいたします〜
(受験終わったら書きたい中編の序章部分)
「これをね、こうすると"しあわせ"になれるんだよ」
腕に赤い紐を結ぶ少女が居る。白い細い腕に、赤い紐を蝶々結びにして、腕飾りの真似事のようにしている。
にこりと少女が笑った。しあわせ。その意味を果たして理解しているのか。いや、オレよりはしているだろう。こんなふうに、へらへらと何も知らないような無垢な瞳で笑いかけてくるのだ。知らないわけがない。オレよりは、知っている。
ネジくん、ネジくんと擦り寄ってくるたびに、家族の話をしてくる少女。
今日はお母さんがこれを作ってあげたら、有難うって言ってくれただとか、お父さんにこう話しかけたら、こう言ってくれただとか、オレにはもう二度と戻らない幸せな家族の話。
同年代の知り合いがオレとヒナタ様しかいない隣の集落の一族の少女。所謂幼馴染は、大きな目にオレを映して、楽しそうに話をする。
これをしあわせと呼ばずして何と呼ぼう。
楽しそうに日々を生きている。楽しそうな日々を聞かされているこちらの気持ちも知らずに。しあわせというものは、誰かの犠牲が無ければ生まれない物なのだろうか。人の父を踏み台にして、奴らはしあわせとやらを掴んだ。…そう思い至った瞬間、黒い物が胸からあふれ出そうになった。
「おねがいごとをするんだよ。赤い紐が切れるまで、ずっとおねがいしつづけるんだよ。わたしね、これから願うんだよ。わたしね、ネジくんが」
「お前も苦しんで、"不幸せ"になればいいのに」
このとき、オレの言葉の下敷きになった彼女の言葉がどんなものであったのかを、オレは一切覚えていない。
丸い瞳が、更に大きく見開かれ、涙が滲んでいて、笑顔が一瞬で消えた。呆然と、裏切られたと叫ぶような少女の顔。少女はそのまま行ってしまった。
その時点で少し後悔した。もう少し大人になればよかったと反省した。だけど、あの時点、あの時オレは、願っていたのだ。まだ、大人に、父と母にすがりついて笑う「こども」のままでありたかった――と。
少女の一家が、娘を遊郭に売り、その後無理心中したという話を聞かされたのは、その日の夜のことだった。
(鶏主人公)
「質問」
「はい」
「何属性ですか」
「…」
「木を成長させて動かしてみたり石化させたりしておりましたが、歩には初代火影の遺伝子があるんですか」
「…心を通じ通わせることで自然現象も手懐けられるようになる素敵な一族です」
当サイトの管理人は第二部をまともに読んでませんってことにしておきましょう。
「今からネジにのろいをかけます」
「ほう」
「ここにあるのは『呪いの書(のろいのしょ)』。この呪いの書を使ってネジを呪います」
「どうやって」
「まだ中見てないけど…えっと、新しい消しゴムのカバーに緑のペンで好きな人の名前を書いて、誰にも見られないように使い切るのと…席替え前日に好きな人の机と自分の机を赤い糸で結んで次の日の朝に解くと隣同士…っていうのと」
「やはりそうか。お前は馬鹿か」
「痛っ…なんで叩くの?」
「これは『まじないの書』だ」
「え」
みんな1度は騙されると思ってる。
小説とか読んでて、「呪い」って出てきて「えっのろい!?」って勘違いしちゃう場面あると思ってる。どんな場面だ。
手先がどんどんと冷えていく。冷え性の私は文字を書こうとすれば書こうとするほど指先の体温をなくしていく。
これだから冬は嫌い。寒くて電気代もかかるからずっとストーブをつけているわけにもいかなくて、時間も限られているし。どうしてセンター試験とやらは冬に行われるのか疑問で疑問で仕方ない。
「秋とか夏にやれば、今度は時間が足りないって嘆くくせに」
「冬寒いもん。心まで冷えそう」
そうだな、この結果だもんなと呟きながら、兄さんが私の模試の結果をぺらりとめくる。
テーブルに緑茶を置いてくれたことに関しては優しいなと思うのだけど、先人にそれを見られると恥ずかしい。だってこの時期にこのざまだ。
「…やっとボーダーか。11月のこの段階で」
「先生は大丈夫って言ってるんだけど、評定がCで大丈夫って慰めな感じがするんだよね。A取らないと安心できない」
「お前は高校もそうだったな。98%じゃないと怖くて行けないって」
「おかげで良い学校に行けたんだけどね。あのままあの学校選んでたら潰れてた」
「で、今回の逃げ場は?」
「無い。そこ一択。私立も微妙だしそこだけって思っておく」
「そうか」
頑張れよ、とぽんぽんとネジが私の頭を撫でる。
染みてくるような暖かさが、私に勇気をくれた気がした。
※死ネタ・旧拍手文※
「もしも世界が終わったとして、どちらかしか生まれ変われなかったらどうする?」
「ずいぶん理不尽だな」
「そういう話を聞いたからねぇ」
ずっと一緒だった双子が、離れ離れにならないといけない話。
どちらかしか生まれ変われないよ、と、理不尽な条件を叩きつけられた話。
「それならオレたちは双子でもなければ兄弟でもない。この話は無効だ」
「でもおんなじ目をしてるわ」
「それで」
「同じ使命を背負っているでしょう?」
宗家を守るという運命。
運命という重い鎖の名を口にしたら、きっとこの人は否定するだろうから、代わりに「使命」に置き換えたけれど、きっとこの人は気づいている。
「何を馬鹿な」
「でも、もうそういうものでしょう?」
恋人とか、友人とか、それ以前に私たちは同じ血を引く一族の人間。
この消えない鳥かごに閉じ込められっぱなしで、それでも外に出ることを諦めない、二人。
「でもネジはきっとどこまでも生き残るわ。あなたは強い人だから」
もう一度その男は「馬鹿な」と吐いて、遠くへ消えて消えていく。
本当に恋人とは思えない扱いだと、私は小さく笑った。
****
その戦争は終わりそうも無かった。
降り注ぐような痛みの雨。
泣き叫ぶ死者の聲。
その中で、私とネジと、そしてヒナタ様とナルトは戦っていた。
「ねぇネジ、あっちがひどく手薄なの。行ってくれる?」
あちらのことなんて全く見てもいないくせに、と自分を笑う。
その確証の無い言葉を信じたネジは、そっちのほうに向かっていく。
ああ、これでいい。これで彼は、
「ナルト君!」
彼を、この世界の最後の光を、守ろうと身を挺す「宗家」。
ああもう仕方が無いね。
私たち分家は、もう仕方がない。
傷つこうとする宗家がいたら、身を挺して庇ってしまう。
ああ、でもよかったよ。
ネジ、貴方がまた犠牲になることがなくてさ。
「ほら…言ったでしょう?」
どちらかしか生き残れない世界、私たちはそういう風に作られたんだ。
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