Short Dream



眠る彼が、もう瞳を開くことは無い。
何度揺さぶっても眼を覚ますことは無い。
ちょっと前までは、上に乗っかって潰してあげようとしたり、思いっきり揺さぶると少し不機嫌そうに眼を覚ましていたのに、たまにいたずらっぽく笑ってこの身体を捕まえてくれたのに、動かない。
二度、と。

(――歩、)

優しい声、もう聞こえない。
もう名前なんて呼んでもらえない、帰ってこない。戻ってこない。
もうどこにもいない、もう笑い会える日々はこない。

――死。そう、死。

死ぬってことはつまり終わるって事で、心臓が停止して、麻痺するように体が固まったらあとはもう眠ることしかなくて、黙りつづける彼が笑いかけてくれることももう無くて、閉ざされた目が開くことも無くて、花が散って、枝が朽ちて、支えを失ったそれは地面に無様に倒れ、そのまま根っこまで枯れるような感じであなたの身体も崩れて、燃やされて融けた身体は空に昇って、ゆっくりと消えて、小さく縮まったその身体の残りは埋められて、流れる時間の中で土に還って、そうやってちょっとずつ無くなっていくにつれ、私は彼の世界から省かれ追放されて、辛うじて繋がっていた糸は解かれて、そのままぷっつりと切れて、壁で分断されて、私からまた何かが減らされて、塞がれて封じられて奪われて、等式から引かれて、取り戻そうともがいても道は伸び続けるばかりで妨げられて、そうして何もかもを砕かれて壊されて、叶えたい願いの残骸は海に沈められて、盗まれた希望も夢も何もかもが、時間と記憶と共に変わって、濁って、廃れて、いつしか私の思考から除かれて、自分の手で手放して、重ならない時間の中で残酷な温もりを引きずりつつもいなくなった彼を忘れていく―――――それが、死。

「・・・どう、して」

みんな、みんな変だ。
どうして手を繋いでいるの?ここにいる彼のことを忘れたように。
どうして、守るって、守りあうからって、約束してくれたのに。
失わせないって、必ず返すからって。
だから信じてた。信じて、帰る場所を攻めて守っていようって、ずっと待ってた、のに。

「うそつき」

帰ってこない。
守られなかった。
言葉は全部うわべだけで、本当は。


「ネジ、」

辛かったね、痛かったね、何もできなくてごめんね。
お疲れ様って抱きしめたかったんだけど、ごめん、なんだか私も疲れたよ。
待ってるだけじゃ、もう駄目なんだ。待ちぼうけなんてできる性格じゃないんだよ。

「これで終わりなんて、言わせないから」


作り出した「永遠」
思えばあなたは苦しい過去をずっと背負っていて、心も壊れちゃいそうなくらいに苦しんでいたよね。
でも誰もあなたの苦しみを、あなたの現在を理解してはくれなかった。
みんなうわべだけ、きれいごとだけ・・・それでもあなたが幸せそうだったから、それでもいいと思えたんだけど、ね。
あなたの自由って、幸せって、なんだったんだろうね。



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