(やけくそ感情なのでほぼ会話文)
(設定…学パロ。放課後の教室に日直日誌を書いているクラスメイトの日向君のところに急にドアを開けてやってくる
「推しの香水が出る」
「急にどうした」
「急にどうしたって聞きたいのはこっちなんだよ…電車から危うく転げ落ちてそのまま轢かれるかと思った…」
突然現れたクラスメイトの歩の姿に若干戸惑う日向君。戸惑うといっても多少日誌を書く手が止まる程度なので、まあ心の中ではまた狂ってるな、と思っているくらい。歩は何も見えていないので普通に目の前の椅子に座って日誌を書いている机で頭を抱えはじめる。
「ネジの香水が出るんだって!!!!!!」
「…良かったな」
「よかったのかな???よかった。でもなんか、なんかね、冷静なの」
「冷静…?」
「うん、あの、夢かナルトスなのか…また幻術かな…って…」
「ああ…」
クラスで流行ってる漫画のことだな、とちょっと思い出す。あんまり深いことを考えると哲学がはじまってしまう気がしたので日向君もとい日向ネジはそこらへんのことは考えないことにした。歩がそういうのにハマっているのはなんとなく前から知っていたし、そいつが好きなのも嫌というほどに聞かされている。その程度だ。別に同姓同名の人物に対してちょっとイラっともしていない。別に。
「言ったっけ?Narusivにネジ夢書いてるって話したと思うんだけどさ、私ボキャブラリー乏しいからネジに抱きしめられた時の描写大体八割『ネジの匂いがする…(はあと)』なんだけど」
「…ああ(返事しにくそうな顔)」
「これからは【ネジの匂い】が言語化できるものになるってことでしょ?『見知った彼の柔らかなにおいがする』とかじゃなくて『張り詰めた風格を放つ冷ややかなシトラスとそこに重なる松の木の荘厳な空気感』とか書けるってことでしょ????」
「いや、あくまでイメージで作っているものであってソイツが実際にさせてるものじゃないだろう…」
「わかる…それもわかる…ちょっと汗の匂いとかしててほしい…」
「……」
「いやでも何も見ずに電車から降りた瞬間に速攻予約購入したんだけど今こうしてサイト見ると解釈一致なんだわ…なんにも染まることのない誇り高さ…作ってる人はネジ推しだって分かる文章だよね…」
「見せなくていい…」
スマホを押しのけながら眉間を少し揉む。どうしてか異様な疲れを感じつつ、それでも楽しそうにしている歩をネジは一瞥する。着いていけそうにないが聞いてやらないといけないような気がした。なぜならこの場には自分しかいないのと、下校時間にはまだ早いため。
「はー…高い空へその手を伸ばす…わかる…マジで飛躍してるわ…推しが飛躍していく…」
「……」
「あのね日向君香水とか興味ないだろうから分かんないと思うんだけどさ」
「…なんだ」
「世の中には推しの香水をお風呂場にわざと吹いたり、枕に吹いてみたりする人がいるんだよね。存在を感じるために」
「存在」
「ベッドに推し二人の香水を吹いたりすることで事後を表現したりとかあるじゃん」
「……」
「例えば掛布団にネジの香水を吹いておいて私がそこに寝たらもうセッ」
「やめろ」
「あっ…ごめん」
クラスメイトの最後まで言わせない止め方に歩はちょっと(やっと)申し訳なさそうに勢いを弱める。まあ確かに深く考えなかったが、同姓同名の推しの香水の話を聞かされているクラスメイトからしたら溜まったことじゃなかっただろう。
それでも言いたいことをひとしきり喋ったことで少しスッキリした。八月から放置している原稿とか、Narusivに放っておいてる長編のアレとか、帰ったら久しぶりにやる気になってもいいのかもしれない。なんだか疲れた顔をしているクラスメイトに、歩は最後にこれだけは言って帰ろうと思った。
「日向君」
「…なんだ」
「Primabuacs『「NARUTOーナルトー疾風伝」フレグランス』第二弾、先行販売日は4月29日です」
「……」
「オンラインでの予約は今日2月28日から。一般販売も5月12日からはじまるよ」
「……」
「買おうね」
「…買わない」
End.
ただのダイレクトマーケティングになった。日記として書くか更新履歴に「お知らせ」とか言って載せるか迷ったんですけどなんか歩きながら考えている図が日向ネジ本人に詰め寄る図だったのでこうなりました。
弊夢主たちは「私たちは前から知ってましたよ」と後方彼氏面を装いながら裏で今パニックになっている。ありがとうございます。ありがとうございます。よろしくお願いします。
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