「夏と言えばー!!!?」


「「「海ー水ー浴ーっ!!!」」」

「イェーイ!」とハイタッチするクリスティナとフェルト。

面倒臭いことに、現在ソレスタルビーイングのメンバー勢揃いで海水浴に来ている。
日射しがガンガンと照り付ける。
水着を着用しているみんなとは違い、おれ一人だけ半袖パーカー。
(怒られたから一応下に水着を着てはいるが…)
果てしなく面倒だ。
いろいろ、と。

「惺ー!こっちこっち!」
浅瀬で水の掛け合いをしている女性陣。
手を振っておれを呼ぶ。
そんな彼女達に、
(いや、おれ…泳げないんだって)
と、脳内で突っ込む。

取り敢えず、触らぬ神に祟り無し、という訳で、ロックオンから貰った麦わら帽子を装着。シャベルを片手に砂でトンネルを開通させることにした。














―――あっさりトンネルを開通してしまった…。
(どうしよう……)
チラッと浅瀬を見る。
女性陣だけではなく、ロックオン、アレルヤも水の掛け合いに加わって白熱していた。
到底終わりそうな雰囲気ではない。
(む…)

「ティエリアー…」

パラソルの下で読書をしていた彼を呼ぶ。こうなったら彼も巻き込むしかない。

「なんだ?」
本を見つめていた瞳がおれに向けられる。
「暇なんだ。構ってくれよ」
「まあ…いいが。何を…」
「んー、ちょっとそこに寝てくれないか?」
「ああ…構わないが…」
「さんきゅティエリア」















―――どうしよう、


砂に埋まって顔だけになったティエリアを見つめる。その身体は砂によってナイスバディへと変身していた。
何もやることがなくなったおれ。そんなおれを責めるかのようにティエリアもおれをじっと見つめた。

「君がやりたかったのはこれか…」
「まあ、そんなもん…」

ティエリアの瞳が「下らない」と言っている。

「だって構ってくれるって言ったじゃねーか」
「……………。」
ティエリアは黙ってしまった。

おれは再び浅瀬を見る。
今度はビーチバレーをしている。
やはり、終わりそうにない。


「…仕方無い。」
おれは呟く。
「刹那と遊ぶか」

「おい、惺」
「ん?どうしたティエリア」
「早くここから出…」
「あ、そうだったそうだった」

思い出した。
白いティエリアが日焼けしてしまったらやばい。
おれはバタバタとパラソルのもとに走って白いハンカチを持ってくる。

「おい、惺…っ!」
「これ、日焼け防止な」

ふぁさっ、

ティエリアの顔にハンカチを被せた。

「おい!惺ッ!」



「せつなー!」













―――カメラ、欲しいな。



二つ並んだナイスバディを見ながらそう思った。
勿論、砂に埋まったティエリアと刹那だ。

さっきまで二人から文句が飛び交っていたが、諦めたのか何も喋らなくなった。

「ふぅ、達成感だ」
額の汗を拭う。

その時、
ビーチボールが、ぽんっ、ぽんっ、と…

「惺ー!それ取ってくれー!」
ロックオンの声。そして走ってくるクリスティナ。
おれはボールを拾うとクリスティナに向き直る。

「ほら、」
「ありが……うわ、なにこれ…」
二つのナイスバディ(白いハンカチ付き)を見てクリスティナが引く。
「おれの芸術だ。カメラはないか?」
「あー、どこかにある…はずじゃないかな?」
クリスティナが苦笑する。

「てかさ、惺、いつまでパーカー羽織ってるの?」
「あー、いつまでだろうな」
「茶化さないの!今脱いで!」
「却下。」

クリスティナもしつこいな、そんなことを考えたら、浅瀬に残っていたメンバーが、おれ達が何やらもめている様子に気付いて集まってくる。

「どうしたのよクリス」
「スメラギさ〜〜ん!惺がパーカーを脱いでくれないんです〜!」
視線が一気におれに集まった。
……なんだよ、その、おれが悪い、みたいな視線は…。

「もー!せっかく惺が似合いそうな黒いビキニを買ってきたのに…」
「「「「は?」」」」

男性陣からの、素っ頓狂な声。

「お前…っ、その下…、ビキニだったのか…!?」
「悪いかよ」
ロックオンに吐き捨てた。
どーせおれはビキニとか似合いませんよ。
例えスタイルがよかったとしても、腹筋が割れてたり、妙なところに筋肉がついているし…。
(マイスターだから仕方無いんだがな…)
ふいっ、とそっぽ向く。


が、次の瞬間、悪夢がやって来る。



「……………脱げよ。」


「……は?」
突如投下されたハラスメント紛いの科白。
おれは目を丸くした。
その科白が、
アレルヤの唇から生まれたものだったから。
みんなも、彼の意外過ぎる科白に石化する。

「お前……ハレルヤだろ……」


アレルヤの顔を見て、やっと彼がハレルヤだと気付いた。
(ハレルヤなら、さっきの科白も納得だな。)

漸く頭が回転し始めた。
が、厄介なことに。

「いいから脱げよ!」
「バカ言うな」

ハレルヤが強引に迫ってくる。
(てゆーかおれには脱げない理由が…)
「おい、ハレルヤ!」というロックオンの声も、この暴れん坊の前では無力だった。

「なら…、」
ハレルヤはニヤッ、と笑う。


「俺様が脱がせてやるぜ…!」
「ばっ!やめっ!………わっ!!」
砂浜に押し倒される。
蒼い空が見えた―――なんて、冷静に考えてる場合か。
女性陣も、急展開についていけないらしくただこちらを見つめている。

「ハレルヤっ!!!放せっ!!!」
「やだねぇ、お前のビキニ、堪能させてもらう」
「やめろっ!」
バタバタ暴れる。
ロックオンが「おい!離れろ!」とハレルヤをひっぺがしにかかる。
が、

「邪魔すんな!」
ロックオンに抵抗するハレルヤ。
そしてそのまま乱闘。
ハレルヤはおれを離さまいとガッシリ掴む。
「あぅ…、っん!」
…百歩譲ってそれはよしとする、よしとするが……掴んでる場所が…。

「んぅっ!やめ……っ!!!」

…物凄く、敏感な、とこなんだ、よ…ッ

「この変態野郎!惺から離れろ!」
「……ひゃ…っう!」
「惺はそうでもなさそうだぜー?」
――もみもみ。
「お願…、やめ……っ!」
頭がショートしそう。
てゆーか、恋人の前で胸を揉まれてるおれって…。

「はんぅ…っ、ハレルヤ…っ!!!」
「へぇ、いい声出すじゃねぇか。ロックオンにも聞かせたのか?」
「ちょ…っやめっ…!!!」
「ハレルヤ!!!!!!」

ロックオンが叫んだ。
と、同時に―――――…
(あ…っ、やべ…っ!)

ばっ、と
パーカーを脱がされた。


「…………………………。」

「…………………………。」

「…………………………。」


沈黙。
おれはやっぱりな、と客観的に思った。
黒いビキニ、それが嫌だという理由もあったが、一番嫌だったのは――…

「惺…っ、」
考えてを巡らせていたおれはロックオンの声で、現実に戻る。
おれの身体を見てどうすればいいのか分からなくなっていたハレルヤを渾身の力で退けて立ち上がる。
ふわっ、と風がパーカーを舞い上げる。
その身体から見える、
あの時に刻まれた、
肩から脇腹にかけて走る深い傷痕が――…

(…居づらい)

「おれ、向こうでカニ捕まえてくる」

みんなの視線に耐えきれなくて、そんな科白を吐き出した。

「おい!惺ッ!」

おれはみんなの言葉を聞く前に走り去った。


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