原因は忘れた。ただ、とてつもなく稚拙な事が原因だったのは、はっきりと覚えている。
そして、
「もう知らねぇ!お前なんか何処にでも行っちゃえ!」
「ああ!ロックオンに言われなくてもそうするさ!」
「そうかいそうかい、なら早く行けば」
「今行くっつーの!じゃあな!バカロックオン!」
「な"!!!おい!!惺てめぇ!!!」

――とても酷い事を言ってしまった事も。

(何やってんだよ俺…)
一人で悶々と考える。
外に出た時はもう既に彼女の姿は見当たらなかった。
(いや、でも、惺にだって非はあるだろ)
ここまで酷い喧嘩をしたのが久々なせいか、謝り方も仲直りの仕方も、どうすれば良いのか忘れてしまった。
(子供だと思われたって構わない…。今回は絶対に謝ってやんねーからな)
一人でスタスタと歩く。
惺を追い掛けようと咄嗟に出てきたが、今となってはそこまでする必要も無かったように感じてきた。
(だってあいつが悪いんだし…)
刹那、俺の横を一組のカップルが通り過ぎる。
「…チッ、」
喧嘩している今は、そんな光景にまで腹が立つ。
(取り敢えず、この気持ちがおさまるまでそこら辺をうろうろして…)
そんな事を考えた時だった。

「ねぇ、オニーサン」

妙に甘ったるい声が聞こえた。
声の方向に顔を向けると、そこには二人の女性。惺とは対照的な、長髪で金髪。おまけにミニスカート。
彼女達が声をかけた理由を、俺は逸早く察した。
「暇だったら遊ぼうよ、オニーサン」
(やっぱり逆ナンか…)
高いヒールをカツカツ鳴らしながら近寄ってくる彼女達。歩く度にツンとした香水が鼻を刺す。
「ねぇ、オニーサンってば、聞いてる?」
「あ、ああ…」
「暇だったら遊ぼ」
好みではないが一般的に見れば綺麗な女性二人に挟まれる。
罪悪感が僅かに生まれて、断ろうと口を開いた刹那的に、

「バカロックオン!」

彼女の科白が過った。



「遊ぶか…」
――全ては惺のせいなんだから。


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