真っ昼間のブリーフィングルームにて、

どうしてこんなところにいるのだろうか。
惺は場違い過ぎる自分の存在にふと思った。
「…――でねぇ!そのナンパしてきた男がイケメンでねっ!!」
「へーえ…」
クリスティナ、スメラギさんが喋っているのをぼーっと聞いている。目の前のお菓子をぱくっと一口。だんだんつまらなくなってきた。だいたい真っ昼間から女子会だなんて…おれ、筋トレしなきゃならないんだが…そんな願いは三人には届かない。
その時、バチっ、とフェルトと目が合った。
「……………。」
「…?」
「………惺の……」
「あ?」
「……惺の…過去の恋愛とか…気になる」
(はああああ?)
惺は心の中で思わず叫んだ。何てことしてくれたんだフェルト…。クリスティナとスメラギさんの瞳が此方に向けられている。
「確かに気になるわね」
「気になる気になる!」
(これは逃がしてもらえないパターンだな…)
惺はひっそりと腹を括った。

「………愛した奴はいた。」
「それって例の女の人?」
「…まあ…そうだな」
「女もイケるとか…惺ってつくづく凄いよね…」
(いや、違うくて…)
誤解されるのが嫌で思わず喋る。
「…あいつだから好きになったんだ。全ての女がイケるって訳じゃない」
「やあああん!!!!今の科白、惺が男だったらイチコロだったのに!!!」
クリスティナが立ち上がる。悪かったな、と惺は溜め息をついた。
「彼女とは何処までいったの?A?B?それとも最後までいっちゃった?」
「……スメラギさん…今はまだ昼です」
「いいのいいの!ホラ!吐きなさい!」
女子パワーに圧倒される。皆はこんな話をしていて恥ずかしく思わないのか?と若干怖くなる。
「……あいつとは何もない」
「何もなかったの?!」
「おかしいわね。両想いじゃなかったの?」
おれはスメラギさんの科白に若干言葉を詰まらせた。
(あいつを殺した後にあいつがおれを愛してくれていたと知ったから…何もないのは当たり前だ)

「何も、ない」
「そう、つまんないわね…」
(つまんないって…)
どよんと暗くなる惺。いつになったら解放されるのだろう、と不安になる。が、それに上乗せするかのように。
「ねえ、男は?」
「は?」
今度は素っ頓狂な声を堪えきれなかった。
クリスティナは満面の笑みで問うた。
「女だけじゃなくて男の話もしてよ?」

一瞬だけ年上の婚約者の顔が過った。
「男、は、いない」
嘘を吐いた。
上手く誤魔化せただろうか。不意討ちだったから自信が無い。
「嘘でしょ!!!!」
見抜かれた。
「だって惺美人だもん!男がいなかったはずないでしょ!!」
「…………………。」
「無言ってことは肯定してるってことよね!!」
「………いや、ちが…」
「吐きなさい惺」
「………う、(逃げれな…っ)」

「惺、」
天の声だ、と思ったおれは末期。そこまで思う程この場から逃げ出したかったのだ。
「ロックオン!」
おれは立ち上がってバタバタと駆け寄り、彼の腕をガシッと掴んだ。(何故か不機嫌な顔をしているがそんなの構ってられない。今は逃げる事が優先だ)
「お前と約束してたんだったな!あー!忘れてた忘れてた悪い!」
早口で科白を吐き出しておれは逃げた。




「…さっきの話の続き、じっくり聞かせてもらうからな」


そんな怖い科白が降り注ぐ。
ああ、もしかして選択肢を間違えたか、なんて後の祭。
聞こえないふりをしながらおれはひっそりと溜め息をついた。




(真っ昼間の女子会)



2012.1.5

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