ゆらゆら揺れる蝋燭の火は真っ暗い室内を、ひいてはその場にいる男達をぼんやりとそこに浮かび上がらせていた。
聖夜である。金色に塗ったくられた蝋燭が、嫌というほどにそれを主張していたがしかし、クリスマスだからという理由で彼はその火をともしているわけではなかった。電気が止められたのだ。淡い光が醸し出すムードも簡単にぶち壊すような、そんな男三人の聖夜だった。

「払い忘れたんだ。聞いてくれよ、金がないわけじゃあないんだぜ」

メローネは取り繕うように言った。説得力のかけらもない言葉である。その場にいたギアッチョもイルーゾォも、彼が無駄使いが趣味のブランド狂いで、バイクなどの高額商品をやたらに買い変える癖があることを知っていた。ついこの間も新しいバイクを買ったらしい。曰く、女とバイクは、長い付き合いはしないほうが良い。とのこと。

「ばっかじゃねぇの」
「同感」

ギアッチョとイルーゾォは溜息混じりにそう言い放った。こんなことならいつもの数倍は良いワインも、近所で評判の菓子屋のパネットーネも、買ってこなければよかった。

「そんなこと言うなよ。ところでさあ、料理なんだけど」

メローネは料理が上手だった。ギアッチョもイルーゾォも、それが目当てでわざわざメローネの家に出向いたようなものだった。

「ガスも止められちゃって」

あは、なんて笑うメローネに、ふたりはとうとう、じゃあ行くか、なんて言い合ってメローネの部屋をあとにしようとした。

「待って!待っておくれよ、材料はちゃんと買ったんだぜ!」
「うぜー!触るんじゃねーよ変態が!!」
「そう言うならさっさと材料でもフライパンでも持ってこいよ!」

二人に怒鳴られ、しかしメローネはどこか喜々としてせまっくるしいアパートメントの、この玄関からは調度死角にあるキッチンへ向かっていった。

「ギアッチョの家な」
「はぁ!?なんでだよ!」
「お前ん家のほうが近いだろ。こっから」
「畜生…クソッ」

なんて話なんかしていると、じきに鞄に二人にはよくわからない調理器具なんかを突っ込み、コートを羽織ったメローネがやってきた。

「お待たせ!悪いけどスーパー寄って良いかい?」
「は?なんでだよ」
「今日あいてるスーパーなんて、ギアッチョん家から反対方向のしかねぇだろ」

「冷蔵庫も止まっててな、食材全部腐っちゃってて…」

またしても笑いながらそう言うメローネに、ギアッチョとイルーゾォは嗚呼だめだこいつはと心の中で頷きあった。そうして、「食材代、割り勘だよな?」なんてのたまうメローネに一発お見舞いしてやろうかとも囁きあったがしかし、後が面倒なのでやめることにした。

しょうがなしに三人は、クリスマスでも営業している数少ないスーパーへ歩きだす。

「こっち方向なら、俺ん家じゃなくてイルーゾォん家のが近ぇよな」
「…げっ」

ギアッチョの呟きに、イルーゾォはかえるが潰されたような声をあげた。
買い込んだ酒とこれから作られるであろう食べ物のごみにまみれる自分の部屋を想像して、イルーゾォは真っ白く盛大な溜息を聖夜の夜にのぼらせるのだった。






ギアッチョイルーゾォメローネが仲良しだったら私は満足です。