急転直下



ざわざわと騒がしい声とぶつかり合う金属音で目が覚めるとそこは別世界だった。



『…どういうこと……?』

シャナは混乱した。
降下していたはずなのに見知らぬ場所に居る。そのうえ現代的でなく時代劇のセットのよう。

だがそれはセットではなく、間違いなく本物。
人が人を殺し、血を流し合っている戦場だった。


『本当に、何なのよ…っ』




「っ…うぅ…痛い……」


騒がしい中で微かに聞こえた声の方へ顔を向けると、そこには肩に傷を負った男が横たわっていた。



『貴方大丈夫?!』

思わず駆け寄ると、思いの外傷が深くないことに気付く。
しかし男は出た血の量に動揺したのか、うわ言のように死ぬと何度も口にした。


『大丈夫よ、その程度の傷なら』
「っ貴女、は…天の、遣い…ですか?」

男は余程パニックを起こしているのか、突然話しかけたシャナを天の遣いと見間違えた。
不謹慎に思いながら苦笑いを浮かべると、洋服の裾を破り男の肩に巻いた


『残念ながら違うわ。それから貴方は死なない。』
「でもっこんなに、血が…出て、ッうぅ…」

やはり出血量に動揺し、生きる希望をなくしているようだった。
涙を流し嗚咽交じりに言う男を真っ直ぐとシャナは見つめる。


『貴方は生きたくないの?やり残したことだってあるでしょう?』
「でも…でもッ」


『生きたいと強い意思を持ちなさい。貴方は絶対に助かる。大丈夫よ。私を信じて?』

「……僕、は…ッ生きたいです!!」


男の決意を聞いたシャナは優しく微笑むと巻いた布をきつく結んだ。
布はすぐ赤く染まったが、徐々に出血の量も減った。



『大丈夫。死なせないわよ』




(止血のやり方なんて知らないけど)
(体が勝手に動いていた)

(誰だか分からないけど死なせたくない…)



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