無自覚というものは本当に恐ろしくてやっかいだ。もう昨日の雷蔵ときたら…っ!思い出しただけで興奮して涎が出そうであるッ!それくらい雷蔵というやつは可愛いやつなのである。もう家の雷蔵は最高。分かっていただけいのが非常に!ヒッジョーに!残念であるが、私だけの物にしておきたいので心の奥の雷蔵メモリーに仕舞っておくことにする。

少しナイーブになっていた私の心を意図も簡単に雷蔵は救ってしまう。雷蔵☆マジックと言っても過言ではないハズだ。自分でもそのスイッチが入ってしまえばめんどくさい性格になるのは分かっている。なのに雷蔵ときたらそんな私すら愛してくれるのだ。これが雷蔵☆マジッ(略)
指先を絡めて、特に何かを言うわけでもなく、ずっとそうしてくれる。目が合うと、微笑んでくれる。キレイゴトなど言ったって私には何の気休めにはならないことを、雷蔵は熟知しているのだろう。そういう雷蔵だから私も心を預けてしまったのだ。心など預けてしまえば、裏切られたときに馬鹿を見るだけだ。けれど、雷蔵になら、裏切られても、馬鹿を見ても、かまわないと思えてしまう。ほうら、雷蔵☆マ(略)
それを雷蔵は意識してしているのではないくて、無意識、つまりは無自覚なのだ。もうっ雷蔵ったら!私をどれだけすきにさせるんだ!雷蔵はプリキュアじゃないかと私は疑ってならない。


「三之助ー!!どこにいるんだー!」


縁側でゆっくりしている付近に、たたたっと駆けてきたのは、三年生の富松だった。大声を張り上げて、周りをきょろきょろ探しているところを見ると、あの無自覚方向音痴の次屋を探しているのだろう。お前も苦労するな……。見つからなくてがっくりする富松が不憫に思えてしかたない。


「富松」
「は、はい!?」


富松を呼び止めれば、慌てたようすでこちらを振り向いた。呼び止められると思ってなかったのだろうな。びくりと浮いた肩にそれを悟る。そんなに怯えなくとも取って食おってわけじゃないし。どこぞのショクマン先輩ではあるまい。てか富松の先輩だったか、ショクマン先輩は。二重の意味で苦労するな…富松。
呼び止めたものの、なかなか話を切り出さない私におずおずと富松が「なんでしょ、う…?」と聞いてくる。下級生らしい反応だ。


「がんばれよ」


私が一言そう告げると、富松は困ったように曖昧な返事をして、首を傾げながら次屋を探しに駆け出して行った。
無自覚は本当に恐ろしくてやっかいだなあ。富松が早く次屋を見つけられることを願いながら、青々とした空に息を吐き出す。あとショクマン先輩に食われないようにとも。


「おーい!三郎!!」


空を見上げていた視線を声のした方向に向ければ、雷蔵が図書委員会のお使いから戻ってきて、こちらに駆け寄ってきていた。手には包みがある。あれはきっといつもの茶屋の饅頭だろうな。雷蔵のすきな茶屋の饅頭だ。うれしそうに顔に笑みを浮かべる雷蔵は昨日より増して可愛いかった。雷蔵(略)!


「おかえり、雷蔵」
「ただいま、三郎」


おかえりと返せばただいまと返ってくる。ただ何てことないけれど、それがうれしい。たまらなく。


「あ、三郎!これ買ってきたんだ!食べよう!」
「ああ、そうしよう。あの茶屋のだろう?」
「そう!君がすきだって言ってたところの!何でわかったの?」


私は雷蔵がすきだと言ったから、すきなんだ。だが、決してそれは言わない。にこにこと笑いながら雷蔵が、包みを開けて私に尋ねる。そんな雷蔵につられて私も口角がゆるりと上がってしまう。可愛いなあ、雷蔵は。


「君がとてもうれしそうにしていたからだよ」


君は真面目で素直だから、うれしいと隠さず表情に出してしまう。そういうところがすき。しかし雷蔵を見れば、雷蔵は私が思っていた反応と違う、きょとんとした顔をしていた。あれ?どうしたんだろう?


「三郎、それは違うよ」


雷蔵はさっきとは違う、やさしい笑顔で、呟いた。


「三郎と一緒に食べれるから、僕はうれしくなっちゃうんだよ」


ちくしょう、無自覚め。
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