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(hpmi)


碧棺左馬刻はかつての『恩人』を絶対に逃さない話。過去捏造。母が自殺した時に自分達を支えてくれたのは母方の遠い親戚の男で、「お前達が二人だけで生きていけるようになるまでは育ててやる」と偉そうに言いながら厄介者扱いされていた碧棺兄妹を引き取った。

「俺はこの血筋の人間とは絶縁状態だったからな。お前らの母ちゃんとも随分昔に一回話したきりだ。ぶっちゃけ顔も覚えてなかった」と語る男が何故自分達を引き取ったのか分からなくて警戒してばかりだった左馬刻。その様子を見て「そうだ警戒しろ。信じるなよ、俺を」と男は満足そうに笑っている。
男は必要最低限しか左馬刻と妹に干渉せず、保護者らしい振る舞いもしなかったけれど、それまで窮屈な暮らししかしてこなかった左馬刻と妹に自由を与えてくれた。それが男なりの二人への愛情の示し方だった。





(過去)親からの暴力に怯えるだけの毎日。男の親は駆け落ち同然で家を飛び出し、どちらの家も絶縁状態で助けてくれる人間はいなかった。両親が死に、僅かばかりのお金を持って飛び出し、世界を知った。自由を得た。それからずっと一人で生きてきた。
十数年後、たまたま遠い親戚の話を聞いた。夫を殺し、子を残して死んだ女の話。気まぐれに混ざった葬式で、傷だらけの子供が二人、ぽつんと部屋の隅に座ってるのを見つけた。その姿がどうにも過去の自分と被って、気づいたら男は声をかけていた。
男が救おうとしたのは過去の自分だ。この子供達を助けることで過去の自分が救われるような気がした。善意ではなかった。ただの自己満足のためだった。だから必要最低限しか子供達とは関わらなかった。
だけど月日が流れ、子供達に情が湧いて、いつしか男は子供達を愛おしく思うようになった。しかしまともな愛を受けてこなかった自分がまともに誰かを愛せるはずがないと思った。だから手放した。もうお前達は二人でも生きていけるだろうと、綺麗に終わらせるつもりだった。

だけどその頃には左馬刻は男が不器用ながらも自分たちを大事に思っていることに気づいていて、この生活が続けばいいとすら思っていたのに、突然男が手を離したものだから動揺して、何も言えなくて、結局家には左馬刻と妹が二人ぼっち。勝手に拾って勝手に置いていったくせに、それならいっそ関係を完全に絶ってくれたら良かったのに、本人がいないのに家賃も光熱費も支払われていて、残された通帳には毎月一定以上の金が振り込まれる。中途半端に繋がりを残す男に苛立ちを覚えて、恩を売られたままでいられるかと躍起になる。
そうして更に月日が流れ、数年後、今の立場を得て、左馬刻はかつて自分達を拾って捨てたように見せかけて中途半端に関わり続けたクソ野郎を見つけ出し、捕まえて、いかにも悪人らしい笑みを浮かべてみせた。

「逃さねえぞ、オトウサン」


(自分たちを育ててくれた男を『父親』として慕う左馬刻の話)