×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


スペード時代にデュースがライブ配信を観ているのを発見し一緒に観てみた結果アイドルくんにハマりガチファンになったエースくん。ライブ配信は欠かさずリアルタイムで観るし、どこかの島で生ライブがあれば敵の縄張りであろうと変装して参加するし、CDやコラボグッズやアイドルくんが載ってる雑誌は保存用と観賞用と布教用の最低三つは購入する。アイドルくんを馬鹿にする人間がいたら烈火の如くぶち切れるしいつも以上にメラメラするので、何回か船が小火騒ぎを起こしている。しかし直接本人と交流する勇気はないため握手会やサイン会といったファンミにはまだ参加できていないのだった。でも新曲が出たりライブがある度にファンレターを送っているのでアイドルくんに認知されてはいる。なおデュースは普通にアイドルくんの歌が好きなだけなのでエースくんの勢いにちょっと引いてるし、まさかここまでなるとは…と配信を見せたことをちょっぴり後悔している。





アイドルくんのライブでは基本的に戦闘行為はご法度なので、例え海軍と海賊が同じ会場内にいようとライブが終了して島を出るまでは争わないのが暗黙の了解。破った場合はファンクラブのこわいお兄さんやお姉さんから制裁が加えられる。ので、何回目かのライブ参戦時ライブTシャツを着てサイリウムを振る某青色の海軍大将と目が合った時はお互いに全力で見ないふりをした。ちなみにライブ会場ではちょくちょく手配書で見た顔を見かけることもある。





スペード海賊団が白ひげ海賊団に吸収されてエースくんが白ひげのマークを背中に刻んでから初めて家族相手にぶち切れた理由がアイドルくんの限定サイン入りCDを壊されたからだった話。

「サッチ、おま、お前ぇえええええ!!」
「ギャアアアアアッ!?」
「エースが燃えた!!」
「サッチ隊長の髪も燃えた!!」
「誰か海楼石持ってこい!!」

幸い近くにいた一番隊隊長殿が迅速に二人を海へと蹴り落としたためサッチの髪と床が少し焦げるくらいの被害で済んだが、その日からめちゃくちゃ落ち込むエースくん。いつもの明るく元気な様子とは打って変わって無表情でぼーっとしたり、大好きな宴にも参加せず部屋に引きこもってたりするから、下手人のサッチが謝罪の意を込めてエースくんの好物を作りまくるも、「……今食う気になんねえ」と断られ、これは本格的にまずいのでは…?と緊急家族会議が開かれる。

「え、どうしたらいい? どうするべき!?」
「食い物でもダメだとなるとサッチにできることはもうないかもねい……諦めて末っ子に嫌われろ」
「ンな薄情なこと言うなよマルコォ!!」
「反省してるって示すためにそのフランスパン……もとい、頭を丸刈りにするとか?」
「いやいや、ここは指を詰めるべきだとおれは思うぜ」
「ハルタとイゾウはもっと真面目に考えてくれ!!」
「取り敢えず同じものを買って返したらどうだ?」
「それはもうした! したけど、あれサイン付きの限定版とかいうやつらしくて、しかもプレミアついてるからもう手に入んねえって……!」
「ならどうしようもねえな。諦めろい、サッチ」
「マルコお前めんどくさがってるだろ!?」
「ぶっちゃけおれらには関係ないからねい」
「薄情者!!」

一方エースくんはそろそろ立ち直らなきゃとは思いつつやっぱりショックが抜けきれなくて、気分転換に停泊中の島に降りて町中をぶらぶらしていたところで柄の悪い連中に絡まれている青年を発見。白ひげの縄張りならいざ知らず、海軍の屯所があるこの島で騒ぎを起こすのはまずいため普段なら関わらないところだけど、ここ数日鬱憤が積もりに積もっていたこともあり、八つ当たり気味に相手をボコボコにするエースくん。完全に相手が伸びたところで我に返り、やべえマルコに怒られると冷や汗をかいていると、絡まれていた青年が声をかけてきた。

「あの、助けてくださりありがとうございます!」
「あ? ああ、いや、別にあんたを助けようと思ったわけ、じゃ……!?」

顔を見てびっくり。なんと絡まれていた青年はエースくんが大好きなアイドルくんだったのだ!
実は次のライブの開催地がこの島で下見に来ていたアイドルくん。しかし辛い物が大好きなアイドルくんはこの島が唐辛子系の名産地だと知って、仕事のことは抜きにちょっぴり観光したいと思ってマネージャーが事務所との連絡で離れた隙にその場から抜け出したところ柄の悪いあんちゃん達に絡まれてしまったのだった。

「おれ辛い物に目がなくて……大人しくしてろってマネージャーには言われてたんですけど、我慢できなくて抜け出してきちゃったんです」
「あ、そ、そうなん、です、か」

照れ臭そうに笑うアイドルくんにエースくんどぎまぎ。アイドルくんは雑誌やライブではいつも堂々として爽やかに笑っているので、突然の公式からの供給に心臓がばっくんばっくん鳴ってる。というかおれ!!今直接話してる!!推しに認識されてる!!そんな内心大騒ぎなエースくんに更なる爆弾が落とされる。

「あ、そういえば、ポートガス・D・エースさんですよね」

ーー推しがおれの名前を呼んだ!!!!!???

アイドルくんは一度会いに来てくれたファンや毎回ファンレターを送ってくれるファンの名前は出来る限り覚えようとしているので、当然エースくんのことも認知しているのだった。特にエースくんは賞金首なのでその気になれば顔とか一般に流通している情報は勝手にマネージャーが教えてくれる。アイドルくんはこんなに熱心に応援してくれる人が悪い人な訳ないって思ってるけど、お前それピンクの羽毛コート着てる海賊兼王様相手にも言ってたよなあ??マネージャーの苦労は絶えない。
それからいつも応援ありがとうございます、ファンレターめちゃくちゃ嬉しいです、とにこにこ話しかけてくるアイドルくんにキャパオーバー間近のエースくん。あれおれいつ交流会に参加したっけ…?え、金払ってねえよどこに入金すればいい??と現実逃避する思考回路に「そうだ、助けていただいたお礼がまだでしたね。お昼ご飯ってもう食べました? 良かったらご馳走させてください」という言葉が届く。推しと一緒にご飯、だと…?
いやいやそれは流石に、と慌てて断るエースくんにアイドルくんは「そう、ですか? でもそうなると他にどうお礼すれば……」と悩み始めるから、お礼なんていらないと言いかけたところでふとショップに並ぶアイドルくんのCDが目に入る。

「あ、の、それじゃあ……」
「え?」

所変わってモビー・ディック号。結局緊急家族会議では何の解決策も浮かばず、こうなったらオヤジに協力を仰いで…と次なる作戦を考えていたところで町から戻ってきたエースくんと遭遇。俯いたまま歩くエースくんにやっぱりまだ落ち込んでるのか、と冷や汗を流した瞬間エースくんが袋に入った物を大事に抱えていることに気づく。

「な、なあエース、それ……」
「サッチ」
「え?」
「おれもうお前に足向けて寝れねえわ」
「へ……エッ!?」

ようやく顔を上げたと思ったら大号泣してて、しかも抱えている袋をまるで神様からの贈り物のように天に掲げて「むり……推し尊い……」と呟くエースくんにドン引きするサッチ。どうやら壊したCDと同じやつに本人から直接自分宛の名前付きのサインを書いてもらえたらしいよ。やったね!

「お゛れ゛一゛生゛推゛す゛……ッ」
「そ、そうか、良かったな」

なおアイドルくんはエースくんが気に入ったので、これからファンレターが送られてくると気まぐれに返事を書くようになり、その内モビーの上で特別ライブが開催されることになるのだった。


詳細