「だーかーらー絶対シズミカだって言ってんでしょー」
「あー!狩沢さん大声でシズミカなんて言ってたら静雄さんに殺されるっすよ!」
「あの年齢差、あの身長差、帝人くんの腰の細さ、そしてシズシズのかっこよさ!これに勝る萌えなんてどこにもないわ!」
「もう門田さん、狩沢さん止めてくださいよ。この人さっきからシズミカシズミカってうるさいんですよぉ」
「お前らこそこんな公共の場でそんな会話すんのはやめろ……」

池袋某所、片方のドアだけが何故かいわゆる痛車という状態になっているワゴン車の周りで、女と男が大声で会話を繰り広げていた。どちらもそこそこの値段のする服や小物を身につけていたのだが、話している内容が内容なので通行人は皆、彼らを避けるようにして歩いていった。そんな二人に呆れたように突っ込むニット帽の男、ワゴン車の運転手はすでに諦めて車内でなにか雑誌を読んでいた。
そんな彼らに近づいていくバーテン服を着たサングラスの男。この池袋では知らないやつはモグリだと言われるほどの喧嘩人形、平和島静雄。先ほどの会話の内容にかなり深くかかわっている。しかしなにか焦っているようで、ものすごい勢い近づいていく様とその伝説と噂に人混みはモーゼの十戒のごとく割れていった。

「おい!お前ら!」
「静雄……」
「ひぇ、狩沢さんがあんなこと言うからきっと俺らを殴り飛ばしに来たんですよ!」

はぁ、はぁ、と彼にしては珍しく息をきらせていて、喧嘩人形がそんなに焦るなんて何事かと注目が集まった。

「悪ぃ、帝人のやつ見かけなかったか?」
「……えーと、帝人くん?」

見てないわよ、見てないっす、見てねぇ、三人が少し間をおいてそう答えるとバーテン服の男はため息をつき困ったように手を頭に当てた。そしてすぐに踵を返し「久しぶりに暇な日が合ったから昼飯でも食いに行こうって歩いてた矢先迷子になっちまいやがった……。悪かったな、もし見かけたらまた教えてくれ」と言いながらまた人混みの中に消えていった。
ポカン、と取り残された三人組。最初に言葉を取り戻したのはやはりというかなんというか女のほうだった。隣にいる男の胸ぐらを掴んで思い切り揺さぶり始めた。

「ねぇ!ねぇ、今の聞いた?聞いた?」
「信じらんないなぁ、まさか……ねぇ?」
「……あぁ」
「ほうらやっぱり私の目に狂いはなかったのよ!」

今度会ったときに帝人くんに詳しく教えてもらうわ!と楽しそうに拳を掲げる女と、未だに開いた口が塞がらない男が二人。女だけが勝ち誇った笑みを浮かべていた。



ヲタク共の妄想が、現実に!?











シズミカを愛してます。に提出しました

初めまして、水嶋桜です。
今回はお題第二段を考えさせていただきました。
(全く頼まれてもいないのに)お題を考えるのはすごく楽しかったです。
拙い文章ですが、シズミカ好きの皆様に楽しんでもらえたらと思います。
企画の立ち上げ、お題を採用してくださったうららさん、そしてここまで見てくださった皆様、本当ありがとうございました。


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