小説 | ナノ

「ひぃーろぉーとぅっ!」
「ひょわっ」

突然のし掛かってきた彼女に驚いて間抜けな声が出てしまった。彼女はというと大笑いしながら俺を指差している。……あれ?

「ねぇ、なんでここにいるの?」
「あれ?ジェミニとイプシロン保護されたの知らなかった?」
「………あ」

そういえば、星の使徒本部が崩壊して父さんが警察に行く前に誰かが言っていた気がする。

「よかった……」
「へ?どうしたの突然」
「いや、約束破っちゃったから……」

約束、それは幼い頃に指切りをしたあの約束。「いつもお互い側にいる」お互い寂しがりなのにシャイでなかなか友達ができなかったから、二人だけで生きていこうと思っていた。けれどそれを当たり前の様に破壊したのはこの俺

「約束、かぁ」
「……うん」
「じゃあ、もう一回指切りしようよ」
「え?」
「もう一生約束を破らないってね」

にやりと悪戯に笑った彼女にこちらも微笑んで左手の小指を差し出すと彼女はストップと俺を阻止した。

「あのさ、指切りって指を切って約束するじゃん?」
「うん」
「だからもうヒロトも私も小指無いわけよ」
「え、じゃあ右手でやる?」
「………あのですね、うーん、あー」

しばらくうーだのあーだの呟いた彼女は意を決したのか真面目な顔をして俺を見つめた

「く、薬指がいい」

そう真っ赤になりながら告げた彼女にこちらも真っ赤になりながら「え、え、え?」と慌てると彼女は無理矢理俺の左手を取り薬指を絡めた。

「あ、あのさっ」
「なに!」
「い、今は指切り右手の小指にしようよっ」
「……え」
「い、いつか指輪はめたいし」

ばこんと音がして彼女の頭から煙が上がった気がした。



20100920:なくした小指だけを見つめてる

ただのバカップル

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