なぁ、知ってるか?ケンタロス座流星群!

明日の授業に向けて予習をしていたあたしの部屋にいきなり入ってきたサトシが(ノックぐらいしろよ)キラキラした目で話し掛けてきたから、ペンを置いて聞き返した。

「ケンタロス座流星群?」
「あぁ
今日やってくるんだぜ!」
「へえぇ」

ケンタロス座。おもしろい。
もともとあたしは星が好きだった。
わからないことだらけの宇宙や、一見バラバラな星たちが紡ぎだす物語などにたまらなく惹かれ、独学でたくさんのことを学んだ。星の名前や星座の位置、たくさんの神話。その知識は、そんじょそこらの人には負けない。まぁ、それらの知識もこの世界ではほとんど意味のないものになってしまったけれども。
ともかく、だからあたしは、サトシのこんな提案に二つ返事で返した。

「な、今夜さ、一緒に流星群見ようぜ」
「いいね、見たい!!
……けど、どこで?」

ひどく田舎なこのマサラタウン。
澄んだ空気で星は綺麗に見えるが、星空観察に丁度良い高い場所などはない。
庭にレジャーシートを敷いてとか、かな。
うん、悪くない。

「いや、屋根で」
「えっ…、ちょ、それはまずいでしょうハナコさんに怒られるよ!?」
「大丈夫だって
ママ、今日、町内のちょっとした旅行で帰ってこないんだ」

サトシの言葉にピシリと固まる。
少し、あたしの状況を説明しようと思う。
わけあって、そりゃもう深い深ーいわけあって、身寄りのないあたし。
そんなあたしを広ってくれたのがサトシとハナコさんの親子。それ以来彼等の家に住まわせてもらい、さらにはサトシと同じ学校にも行かせてもらっている。
さて、つまりだ。
あたしは普段、3人で暮らしている、そして今日ハナコさんはいない。
結論。
今日は一つ屋根の下、サトシと二人きりということ。

「あ、これママからの書き置き」
「へ…」

曰く
『ちょっと、町内会の旅行に行ってきます
お邪魔虫がいないぶん、二人で仲良く楽しんでね(^^)
ママ』

(^^)じゃねえぇぇ!!

「そこは忠告するとこだろおぉぉーっ!!」
「は?」

実はあたしたち、ハナコさん公認のカップルだったりするわけだ。




ちょっぴりドキドキしながら、いつもより念入りに体を洗ったりしたが、そんなあたしの心配も杞憂に終わり(残念とか思ってない、断じて)、結局二人仲良く、屋根の上で天体観測となった。

「だいぶあったかくなったけど、やっぱりまだ夜は寒いな」
「そうだねえ
あ、紅茶、魔法瓶に入れてきたよ」
「おっサンキュー
さすがなまえ」

魔法瓶をさきに屋根に登っていたサトシに渡して、隣に座る。
すると、サトシが自分にかけていた少し大きめのブランケットにあたしを入れてくれた。
必然的に距離は近くなるわけで。そっと触れ合った手に、ちょっとキュンとした。

「いつ見ても、マサラの星空は綺麗だねー」
「なまえの住んでた所は、どうだったんだ?」
「あたしのいた場所はねー、こんなに星見えなかったよ」

だから、なんだかすごく嬉しいんだ。
そう笑うと、触れていた右手を、ぎゅっと握られる。
とくん、と高鳴った鼓動を、なんとなく悟られたくなくて視線を星空に戻す。

「あっ」
「え?」
「ほら、流れ星!」
「うわあ…」

それはもう、見事だった。
目の前をすうと光が駆けて行ったと思えば、また視界の端ですうと駆ける。
いくつも、いくつも。
しばらく、お互い無言で、手だけをぎゅうと繋いで、ただ流星群を見ていた。

「…すごかったな」
「うん…こんなに星が流れるの、初めて見たよ
こんだけたくさん落ちてれば、願い事、余裕で3回言えちゃうね」
「なぁ、なんて願い事したんだ?」
「んー」

言おうか言わまいか、少し考えて、ぱたん、と甘えるようにサトシにもたれ掛かる。

「サトシとずっと一緒にいられるように、って」

そうぎゅうと手を握るとサトシは体を震わせ、笑うのがわかった。

「だと思ったぜ
そんなんお願いしなくたって、なまえがここを出ていかない限り一緒にいるのにな」
「……ん
サトシは?」
「オレ?」
「うん。
サトシは、何を願ったの?」
「オレは、なまえがいつも笑顔でいられるようにって」

その言葉に、唖然とした顔でサトシを見つめる。
まさかそうくるとは思わなかった。

「ず、ずるい」

それだったら、あたしだってサトシの幸せを願いたかった。
顔を上げてキッと睨みつける。けれど、今のあたしの顔は真っ赤だろうから、たいして効き目はないだろう。案の定、サトシはただ笑うだけだった。
そんな彼に、膨らませていた頬も段々と緩んでいく。
もう一度、今度は彼の胸に寄り掛かる。

「ねえサトシ、好きよ」
「…そうか」
「君が、あたしが元居た世界で知っていた"サトシ"と違くても、好きよ」

あたしが元居た世界で、アニメの中に見ていたサトシは、今のサトシと全然違う。学校なんて通っていないし、もっと鈍感で、恋愛なんて全然知らなくて。
それが可愛いーなんて叫んでたのだけれど。好きだ好きだと、友達と騒いでいたけれど。

「今のサトシが大好きだよ」
「オレも、なまえのことが大好きだぜ」

とても真っ直ぐに、愛を伝えてくれる。
あ、この真っ直ぐさは、元の世界でも、画面の向こうに感じていたものだ。
同じもの、違っているもの。全部引っくるめて、愛おしくてしょうがない。
胸に込み上げるあたたかいものを感じながら、もう一度大切に、紡いだ。

「大好きだ」



キラキラ光る



‐‐‐‐‐‐
Sthreeの咲夜様に捧げます!

原作知識有トリップヒロインと、原作と少し違う世界(学パロ気味?)のサトシの話でした
わかりにくくてすいません…
起承転結がなっていなくてすいません…

ありがとうと大好きの気持ちを詰め込みました
受け取って貰えると嬉しいです(^^)
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