もう少し急がないと、さあ。きみたちの怒りは行き場のないものになって、自分の腹を食い破るようになるよ。もうそんな気持ちは味わいたくないだろう、若者たち。
僕はただこうやって、冷えきった場所にいさえすれば大丈夫だ。他人の心の暗い部位をもてあましながら、だんだんと近付いてくるきみらの足音を聞いて待っているよ。このままゆっくりと、くらやみに晒されているだけで、心が解離して罪悪感なんてものは散り散りに逃げて行くのがわかる。あのとき、あのガラス玉のような目に見たものなんて、いともかんたんに忘れてしまえるさ。

(こどもなんて嫌いだ)
(喉の奥から迫ってくるのが、嗚咽なのか嘲笑なのか、わからなくて俺はあのこの瞳を見ないようにしたんだ)

そうだ、アルバムを見返すときと似ている。写りのよい自分の顔と写りの悪い自分の顔が混ざりこんでいる、出来の悪いアルバム。自分だけがわかる不細工なところを、掲げられているような気持ちになるんだ。
だから早く捨ててしまおう、支離滅裂な自己弁護の言葉だけを、思うままに吐き捨てるのはなんてすてきなことだろう。そこらへんに落ちていたはぎれのパッチワークみたいに不出来な言葉で、子供のようにわめくのだ。

(苛立ちをすべて預けてしまえば、とりあえず僕は、楽しく過ごせるさ……)

あの子は、随分とできた子だった。だから嫌いだった。腹がたったんだよ。まるで大人になってしまったように距離をはかる癖に、柔らかくて小さなてのひらをしているんだ。
あの、小さなてのひらに初めて触った時は良心の呵責ってやつに気付けたのに、俺はそれを振りほどいたんだ。おなじ世界に引きずり込んでしまえば、あの子に幻滅できる、あの子も俺とおなじものだと気付ける、そう信じていた。愚かだろう、知っている、知っているからここにいる。

(小さな匙ひとつぶんにもならない安堵を得るために、あのおんなのこの腹を暴こうとしたんだ。笑ってくれ、笑わせてくれよ、こんな僕を。余計な脂肪を蓄えて、身動きがうまくできないんだ)






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