「はぁ、ごめんな。
もう大丈夫だから」
目から鼻から様々な水を出して情けない顔をしたサンジがゾロから離れてゆく。
「うっわ、格好悪いなー俺。お前の前だと泣いてばっかし」
そう言ってティッシュでぐいっと豪快に顔を拭く。
目や鼻は真っ赤で、でもどことなくスッキリした顔つきになっていてゾロはほっとした。
「まったくその通りだな」
「悪いな、頭借りちまって」
「…別に。元は俺から関わったんだから」
「…すぐには出来ないと思うけどさ。
すっぱり割り切れるように、頑張ってみるよ。
あの子の次の幸せ願えるくらい、クソ良い男になる。」
あの時声かけてくれて、ありがとな。
気恥ずかしそうにはにかみ、サンジはそう言った。
つられてゾロもへっ、と口角を上げて応えた。
「見違えた、そんな顔だったんだな」
「え、元々こんな顔だったろ」
「いやもっと酷い顔してたぜ」
「うそー」
サンジは自分の頬を手で包んで笑う。
ゾロも声を出してケラケラ笑った。
「ちょっと遅くなったな、家まで送るよ」
「あぁ、いいのか?」
「うん。世話になりっぱなしだからな」
勝手に連れて来といてさぁ帰れ、なんて言えないだろ。
そう言い、ゾロを車に乗せた。
ゾロの家は何てことない、車で10分ちょっとすれば着くぐらいの距離にあった。
買い物する時などによく通る道にある、小さめのアパート。
一人暮らしをしているらしい。
「お前ここに住んでたのか」
「あぁ、意外に近かったな」
「もしかしたら何処かですれ違ったりしてたのかもな」
「お前みたいな変な眉毛、一度すれ違ったら忘れねぇと思うけど。」
サンジは気にしてるポイントをつつかれ、何ぃ!?と少し大きな声で反論した。
ゾロは助手席ではははっ、と笑っている。
悪戯っ子のように無邪気に笑うゾロの顔は、心なしか幼く見えて新鮮な気持ちになった。
「…あっ!」
「何だ?」
サンジが急に叫んだ。
「お前の服、家に置いてきちゃった」
「あぁ、次行った時でいい」
「…え?」
「また行っていいんだろ?」
学校帰り、こっちよりお前んちのが早く着くから。
飯もそっちのが美味いし、とゾロがにやっと笑った。
「も、勿論!また来いよ!」
サンジは目をキラキラさせて言った。
正直な話、ゾロは何処か話しやすくて一緒にいて楽しいから。
これっきりで終わるのは寂しい気がしていた。
一応の連絡手段に、とお互いの携帯番号を交換して今日はお開きとなった。
メールアドレスも聞こうと思ったが、ゾロはメールを打つのが苦手らしくアドレスは持っていても意味がないらしい。
不思議な気分だった。
昼間までの自分は、それはもう今日降った雨のようにじめじめと重い気持ちを背負っていたのに。
ゾロが傘を差してくれたあの時から。
妙にスカッとした気持ちのいい快晴のような、清々しい気持ちに変わっていた。
こんな出会いもあるんだな。
雲1つなくなった満天の星が輝く空をちらっと見て。
足取り軽く、サンジは家路を急いだ。
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やっと友達に昇格。
これから盛り上げたいとこですね。