あの晩は話をした後すぐに寝て、次の日。
本当に驚いた。
ゾロの身体からは、傷がほとんど消えていたのだ。
ゾロは邪魔だと言って包帯やら絆創膏やらをすでに取り去っていて、その現状がより一層明確に分かる。
「お前、傷が…」
「あ?寝れば治るって言っただろうが。まぁ完治までにはやっぱりあと1日いるが…」
「本当、何者だお前」
「生まれた時から俺は俺だ」
俺はこの時、あぁそうか生まれつきなんだ、なんて変に納得してしまった。
こいつの堂々とした感じがそうさせたのだろうか。
その日からゾロは、あの晩言った通り俺の店で働いている。
皿洗いと掃除がメイン、仕入れた大量の食材を運んだり、接客は俺のを見て追々に覚えるとのことだった。
不器用そうに見えてこれがよく働く奴で、皿は綺麗に洗ってあるし掃除も隅々までしてある。
ただ電卓やレジを使いこなすのはまだまだ先の事になりそうだが、俺としては非常に助かる人手だった。
「ゾロ、そろそろ昼飯にしよう」
「あぁ、これやったらすぐに行く」
「洗い物は昼の分もまとめてやろうぜ、手伝うよ」
「、一応恩返しなんだが」
俺もゾロも互いに慣れてきて、言い争いもよくするが誰の前より自然体でいられる気がした。
毎日が騒がしかったあのレストランから一人立ちしたばかりの俺にとって、近くに人がいるというのはとても落ち着いて。
ゾロにとっても、ここが落ち着ける場所になっていればいいのだけど。
「おらできた、たんと食いな」
「いただきます」
律儀に手を合わせて飯を食う。
ゾロは肉を好んでよく食べた。
いや、基本調理すれば何でも美味そうに食う(コックとしては嬉しい反応をする)奴なのだが、肉を食うときは格別生き生きしているように見えるのだ。
あと、ゾロは舌なめずりをするのが癖のようだった。
飯を食った時とか、作業している時も時々上唇をペロリと一舐めするのだ。
ほら、今もペロリとゆっくり上唇を。
それが何だか野性的で、妙に色気が…。
ハッと我に返った。
俺は今、ゾロに対して何を思った?
野郎相手に俺は一体何を。
あのゾロに、色気、などと。
後頭部をガツンと殴られた時のように、視界が歪んだ。
まさか、まさか、まさか。
全く、ゾロという奴は現れてから今日までだけでも、俺の人生をいとも簡単に覆してくれたもんだ。
実は無類の女好きである、この俺が。
美味かった、ごちそうさん。
そう言って手を合わせて、ニカっと笑うゾロを見て、確信してしまった。
どうやら、この短い期間で。
いつの間にか俺は、ゾロに、惚れてしまっていた、らしい。
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まだまだ拾うことありますが
とりあえず先に
サンジくんの変化から。
続きますっ