◎学パロ
好きになった相手と、手を繋ぎたい。ハグしたい。
キスもしたいし、あわよくばそれ以上だっていつかはしたい。
そんな願望は、恋する思春期なら男女構わず誰にでもあるだろう。
俺は割とこういう欲望には忠実に生きてきた。
悪い時は友達以上には考えられない女の子相手に、そういう接触を求めたりもした。
だけどゾロは極度の堅物で、恥ずかしがり屋で、真っ直ぐで、頑固で、純真な心の持ち主で、俺の人生の中で一番愛する奴。
だから本当に慎重にお付き合いしなきゃって思ってた。
だからこそ今のこの状況に、俺は吃驚し過ぎて身動きが取れないのだ。
「あ、あの、ちょっと待ってこれ一体どういうことなの」
夕暮れ時の見慣れた教室、その中で俺はゾロによって不意にドサッと尻餅をつかされた。
そんな俺を捕らえるように膝の上に座って、ゾロは真面目な顔をして黙り込んでいる。
「黙ってんなよ、なぁこれってどういう…」
「うるせぇ」
ドスの利いた低い声。
その声と相変わらずきりっと真面目な顔をしたゾロの姿を見て、よく分からないけど何だか大人しくしてなきゃいけない様な気がしてぐっと口を噤む。
ゾロは何か言い出そうとしているが、瞳だけが夕焼けに揺らいで音は出ない。
教室は今、二人だけの空間。
外の雑音が心音に混じってうるさかった。
ゾロがすうっと深く息を吸って、目を閉じた。
その瞬間。俺の目の前の景色が180度ぐるりと変わる。
何故か額に襲いかかる衝撃、鈍痛。
何が起こったか一瞬分からなかったが、ゾロの少し赤い額を見て理解した。
あの石頭で、こいつは俺に頭突きをかましたのだ。
「いってぇぇぇ、お前一体何がしたいんだよ!」
「うるせぇ、てめぇが悪ぃんだろうが!!」
あれ、俺何かしたかな。
痛みに歪む思考で必死に考えてはみるけど、思い当たる節は全然ない。
訳も分からずポカンとしていると、ゾロがまた喋り始めた。
「俺とお前は、野郎同士だが一応付き合ってんだよな」
「あ?う、うん…」
「その割に俺らは、そこらの友人と変わらねぇ付き合いだな」
「うん、ん…?何が言いたいの、お前」
そう訊くとゾロは、だから、とかつまり、とかもごもごとまごつき始める。
何が言いてえ。
そう言おうと思ったその時、何故か口は何かに抑えられ開けなかった。
真ん前にはゾロの顔、やっと理解した、俺はゾロにキスをされているのだ。
「、てめぇは、色恋沙汰の経験が浅い俺を、大切に大切に扱ってるつもりだろうがな、」
「…」
「俺だって17歳の男だ、こういう欲だって、有り余るぐらい持ち合わせてんだよ」
爆発してしまいそうなぐらい真っ赤な顔のゾロには、これぐらいの表現が限界だろう。
だが俺には伝わったぞ。
つまりこの男は、もっとこういうことしようぜ、と、そう言っているのだ。
いやもう、何て言うか、反則だろ。
「ぞ、ゾロ!」
「ぅあ、」
俺たちは誰も来ないのをいいことに、ここが教室である事も忘れて熱いキスを何度も何度もかました。
ゾロが照れて俺を殴るまで、し続けた。
そうだ、俺の愛する相手はあの、ロロノア・ゾロだ。
女の子を扱うような、そんな甘い甘いタッチじゃ、満足はさせられないよな。
ならこれからは、めいっぱい身体でも愛してやるから覚悟しろよ。
俺はバクバクとうるさく心臓を働かすゾロの頭を撫でた。
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だいぶ前に下書きが
できていたこの文。
思春期ですねぇ…