◎学パロ
一面が鮮やかなオレンジ色に染まった空の下、所属しているサッカー部の厳しい練習を終え、俺は家までの帰路である公園の近くの道を歩く。
疲れた、風呂入りてえ。
ぼーっとそんなことを考えながら歩いていると、公園から泣き声が聞こえてきた。
子どものもののようだった。
一体何事だと思い、公園へと足を踏み入れた。
すると、わんわんと泣くガキンチョの側には、俺の見慣れたマリモ頭のゾロがいた。
「おいガキ、転んだぐらいでビービー泣くんじゃねえ」
咄嗟に木の陰に隠れて様子を見ていたが、どうやらゾロは転んで怪我をした少年を心配して近くにいるらしい。
あの人相だから、公園内の人間には小学生相手に高校生がかつあげをしているようにしか見えないだろう。
「これしか無ぇんだ、汗臭いとか、文句言うなよな」
そう言ってアイツは、その少年の流血している足を水で洗ってスポーツバッグからタオルを取り出して、足に巻いてやった。
少年はそれでようやっと落ち着いたようで、泣き止んで足にそれが巻かれるのをじっと黙って見ていた。じゃあこれで後は家に帰ってちゃんと治療してもらえよ。
そう言いその場を立ち去ろうとするゾロに、少年はすくっと立ち上がって頭を下げた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「ああ、いいか。男が少し痛いぐらいで泣くな。女の前では特にな。護りたい奴の前では、情けねえ面見せんなよ。」
少年はじーっとゾロの顔を見つめた後、しっかりと頷いて分かったと言った。
ゾロは、まぁこれ俺のよく知ってる奴の受け売りだけどな、と笑って少年の頭を数回ポンポンと叩いた。
「そのお兄ちゃんも、かっこいいの?」
少年の突然言ったその質問に、俺はどきっと心臓を跳ねさせて動揺した。
ゾロは、普段俺を褒めたりすることは滅多にない。
勿論かっこいいなんて言葉、言われたことがない。
何とも思わぬ形で、ゾロの気持ちを聞けるチャンスが来た。
ドキドキしながらゾロが言葉を発するのを待っていると、にっとはにかみながらゾロは、
「まぁな」
とだけ、これだけ、言った。
まぁな、結局この一言だけでは、ゾロの真意は俺には読めなかった。
ゾロは俺のこと、本当はどう思っているのかな。
そんなことがずっと頭を占領していて、ハッと現実の世界に帰ればゾロは少年に別れを告げて、公園を出ようと俺のいる方へと歩いてきていた。
ヤバい、そう思ったもののもう遅かった、ゾロとばっちり目が合ってしまったのだ。
「しっかし、世の中には人を木の陰から監視する、悪趣味な奴もいるもんだなー」
「う、うるせぇ!出るに出られなくなったんだ、流れで!」
ふーん、と横目で俺を見るゾロと、俺は結局一緒に下校をすることになった。
先程の少年はもう一度礼を言い、そのまま元気にタタっと走り出し、家へと帰って行ったらしい。
「おい、眉毛」
突然呼ばれて思わず、あ、え?という何とも気の抜けた声で返事を返すと、ゾロは真面目な、少ーしだけ(俺にしか気付けない程度の)焦った感じで、こう訊いてきた。
「さっきのガキとの話、全部聞いてたのか?」
俺はゾロがなぜこの質問をするのか分からなくて、でも何となく、ううんと首を横に振って答えた。
するとゾロはそうか、と言ってふいっと顔を逸らしてしまった。
でもこの角度だと頬が赤いのが丸見えで、これは夕陽の赤さでないと、確信してこっそり笑った。
俺はゾロの手を恥ずかしげもなしにぎゅっと握って、残り少ない家路を歩く。
何も言わずに顔を今度は夕陽以上に赤く染めるゾロを見て、愛されていることを実感した。
ゾロ、俺もクソ大好きです!
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微妙ーにオリキャラ(?)出現
ゾロは無自覚な子煩悩だとかわいいなぁ
爽やか青春を目指して、撃沈。