ゾロ、この男の行動パターンにサンジは本当にいつもいつも振り回される。
極度の気分屋でおまけに素直じゃない彼の言動や行動に悩まされた回数は数知れず。
そして現在も進行形で、サンジはそんなゾロに悩まされている。


「おいおい、だから大人しく言うこと聞けよ」

夜のキッチンに、溜め息と共に出たサンジの低い声が響き渡る。
この言葉が誰に向けて話されているかというと、椅子に腰掛けこくりこくりと船を漕いでいるゾロへ向けて。

「そんな眠いんなら部屋に戻って寝ればいいだろ」

「…無理だ」

部屋に戻ってゆっくりベッドの中で眠ればいい、そう促してもゾロはそのたびに重い瞼を持ち上げてそれを拒む。
そしてゾロはまた船を漕ぎ始めて、もうこの一連の流れを何度繰り返しているだろうか。


サンジはもう知らねえぞ、と視線を手元に戻し自分の作業を再開する。
トン、トンと何とも軽やかに包丁とまな板がぶつかる音が聞こえる中に、スースーとキッチンには似合わない息づかいが混じった。
ゾロの寝息である。

サンジはハア、と大きな溜め息をまた吐いて、もう次はねえぞクソマリモと忠告した。
するとゾロがガタッと音を立てて立ち上がった。
そして作業中のサンジの背中を不意にぎゅうっと抱きしめた。
寝ぼけているのだろうか、訝しげに横顔を見ると何故か勝ち気な顔をして笑っている。


「この背中がな、行くなってんで離れらんねえんだ」

いつも俺に素直じゃねえと言うが、どっちがだろうな。


サンジの首筋に顔を埋めて、クスクスとゾロが楽しそうに笑う。
サンジの顔、心臓、全身からボボボっと音をあげて温度を上昇させる。
馬鹿言ってねえでさっさと部屋へ行け、そう言おうとしたがもうすでに肩口で彼は夢の世界へと旅立っていた。

「…負けたよ」

サンジは真っ赤な顔をそのままに、よっこいしょとおもむろにゾロを背負って歩き始めた。
目指すのは男部屋、作業なんてやってる余裕もなく、ただ爆弾を置き逃げして旅立ったこの男の寝顔を眺めたいと、そう思ったからだ。

「明日の朝食、遅くなるのはお前のせいだからな」



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こんなゾロ、良くないですか。
背中がな、のくだりが
書きたいがためにできたこの話。

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