「ねえ、サンジくん、サンジくんってゾロが好きでしょう?」
昼下がり、サンジが船尾でぼんやりと海を眺めていると、カツカツとヒールの音を立ててナミが近付いてきて、そんなことを言った。
サンジは目を丸くして、それからふっと紫煙を吐き出して、まさか、と言った。
ナミは楽しそうな笑顔を浮かべている。
そして、隠しても無駄よ、全部分かってるもの、と言った。
「全部、とは?」
「あら、反応した。知られちゃ困ることがあるのかしら?」
サンジは苦笑して、ナミさんと彼女に焦らすなといった声色で呼びかけた。
ナミは悪びれる様子もなくフフっと笑って、こう言った。
「何を知ってるか教えろって?ダメ、ダメ。私は自分の利益になる取引しかしないわ。」
「お茶、淹れてこようか」
「後でいいわよ、それでは教えるつもりないから。」
サンジはガクッと肩を落とした。
波の音がザザーンと繰り返し響く中で、ナミはふぅっと溜めた息を吐き出して情けない目の前の男の顔を見る。
「ラブコックが聞いて呆れるわね」
「無理だよ、相手が違いすぎる」
「それって性別の点?まぁ、じゃあ女なら優しくグイグイいけば誰でもおちると思ってるワケ?最低。」
「違うよ、そうじゃなくて。相手がこっちをどう思ってるかの問題。ここまで突き放されてのスタートは、初めてだから。」
今更どうしたらいいか、分からないんだ。
サンジがポツリと零したその言葉を、バッカじゃないのとナミが蹴散らし、サンジの情けなく下がったぐるぐる眉毛にデコピンを喰らわせた。
「アンタいっつもあれだけゾロを見ておいて、まだそんなことで戸惑ってたの」
「い、痛いよナミさん」
「バカね、バカだけど、そんなとこもあるんだ。ちょっとだけ可愛いかな」
ただの色欲おバカだと思っていたけど、撤回しとくわね。
それを聞いたサンジがえぇ〜色欲おバカって…、と落胆した様を見てナミはアハハ、と高らかに笑った。
そしてサンジに背を向け、いいこと教えたげる、と告げた。
「一つは、もっとアイツのことを観察した方が良いってこと。二つ目、アンタの気持ちに気付いてないのは、その本人と船長だけだってこと。分かり易すぎ。そして三つ目、三つ目はね」
「み、三つ目は…?」
「やっぱ教えなーい!ゾロー、サンジくんが話したいことあるんだってー!」
ナミはまたしても楽しそうに笑い、軽やかに甲板へと走り去って行ってしまった。
サンジは顔を真っ赤にして、ナミさぁん!と叫びナミの後を走って追いかける。
呼んだか?と甲板で寝こけていたゾロがのそのそと歩いてくる。
ナミは、サンジに向かって舌を出しパチッと愛らしくウインクを飛ばした。
呼ばれたゾロが横切った時、ナミには見えていた。
ゾロの顔がほんのり赤かったこと。
船の手摺りに背中を預けて座り、ナミは嬉しそうに1人呟いた。
「三つ目は、無駄な心配しなくてもあとは時間の問題よってこと」
あと一押しなんだから、頑張りなさいよね。
近くにいたロビンが、何の話かしら?と隣に腰掛けた。
ナミは満面の笑みで舌を出して言った。
「内緒よっ!」
──────────
ヘタレサンジくんとナミさん
うーん、イマイチかなぁ
でもたまにこんなのが書きたかったのです。
ナミさん笑いすぎかなぁ(笑)