コックと喧嘩をした。
元々喧嘩なんてしょっちゅうしているけど、今回のはそんなじゃれ合う様なものではなく本気の言い争い。

理由は分からない。確か最初はいつも通りの軽いものだったのに段々とエスカレートしていって、終いには心にもない罵りばかりが口を突いて。
でも此方から謝る気は毛頭ない。
だって事の発端が分からないから、自分が悪いという理由だって見つからないのだ。


でも、キッチンを出るときに聞いたコックの。

「何処へでも行け、もう疲れた」
あの一言が、喧嘩してからずっと頭の中をぐるぐると巡っている。
何なんだあいつ、ムカつく、何でこんな俺が気にしなきゃならねんだ。

考えれば考えるほどむしゃくしゃする、落ち着いて昼寝も出来やしなかった。



「まぁ、怖い顔」

いつもの定位置で横になっていると、ロビンがくすくす笑って此方に寄ってきた。

その様子を目で追っていると、ロビンは俺の横に腰掛けて本を読み始めた。
相変わらず字ばかりの難しそうな本を読んでいる。

「サンジと、何かあったんでしょう?」

いきなり胸中を覚られドキリとしながら横目で彼女を見やると、言い争っている声が聞こえたから と言った。


「…そんな大したもんじゃねえよ。あいつが勝手に怒ってるだけだ。」

「フフ、若いわね。理由の見えない喧嘩、若い内はよくあるものだわ。」

経験は大事にしなくちゃ。

そう言い、目を柔らかに細めて俺を見つめる。
心なしか安心する温かい笑顔だ。動物が彼女を好くのも分かる気がする。


「っ、でもあいつは、俺との喧嘩なんて気にしちゃいねぇ」

「あら、そんなことないわ。彼、酷く後悔してると思うけど」

ロビンが話す情報に、俺はただ驚き耳を傾け続けた。

今日は煙草を一度に3本吸うこと、ナミやロビンにお茶を注ぐ時にデレデレしないこと、珍しく卵を床に落としたこと、何より今日は笑顔が酷く歪んでいること。

まだまだ何か言っていたけど、とりあえず今日は明らかに調子が悪いらしい。
それも俺と喧嘩してから変わり始めたという。


「何か心当たりがなくて?」

「…普段絶対言わないようなことを言った」

「それね」


ロビンは静かに本を閉じた。
そして、改めて俺の方に身体を向けて真っ直ぐな視線で俺に話す。


「ねぇ、ゾロ。喧嘩だって相手を選ばなきゃ出来ないって知っているかしら?貴方もサンジも、お互いを知りたいし知ってほしいからぶつかるのよ。出来るうちに沢山喧嘩なさい。出来なくなってから悔いても遅いし、溜めて我慢するのも悲しいわ。嫌われることを過剰に恐れないで。貴方もサンジも素直じゃないから、そういうことも大事なんじゃなくて?」

長々とごめんなさいね
きっと上手くいくわ。


そう言い残して、ロビンは女部屋へ向かって歩いていった。


黙って聞いていたロビンの言葉が、胸にじわりと染みを作る。
もう少し、愛されていることに自信を持ってもいいんだろうか。
いまいち自信がなかった、無類の女好きであるあいつが自分を愛しているなんて。


疲れた、という言葉を聞いたとき。正直辛かった。
やはりこんな障害の多い恋愛は重荷なんだろう、と。
言葉には出さなかったけど。


でも、それでもそう思う辺り俺はサンジを好きで。
あいつもきっと俺を好きで。
そうでなければ、今がこんなにも辛い訳はないのだ。足は自然とキッチンへ。
そんなに俺が好きなのであれば、お望み通り全てぶつけてやろう。
骨の髄まで知ってもらおう。


熱くなる目頭を携えて、ゾロはしっかりとした足取りで歩を進めた。




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(サン)ゾロ+ロビ


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