前に奴は俺に、もう少し仲間に背中を預けろ と言った。

ところがどうだろう。
今日の昼間、海軍の軍艦と出くわした時の戦闘。


海軍の兵隊の1人が放った一発の銃弾。
その弾が向かっている先は、兵隊三人余りを懸命に相手しているナミの方で。
本人は、銃弾の気配にはちっとも気付けなかった。
俺やルフィ、その他の仲間達も気づくのが遅れてしまった。
まずい、そう思った瞬間ナミの前にすらっと伸びた黒い腕。

それは銃弾に一足先に気付いたコックが伸ばした、料理人の命である利き腕だった。

どうやら銃弾は、コックの腕を貫くことなく腕中で動きを止めたらしい。
サンジくん、と何とも痛々しい声で名を呼ぶナミに、
ナミさんお怪我は。
心配そうに声をかけた後何事も無かったようにまた戦闘の渦中へと戻っていった。



戦闘が終わってから、チョッパーは直ぐにコックの治療を行った。
ナミは悔しそうに顔を歪めて、黙って治療を見ている。
当のコックはというと、傷口はレディーのように扱えだとか馬鹿な事をほざいていた。



「珍しくご自慢の脚は出なかったんだな」「バァカ、あの状況で脚が傷付きゃそれこそピンチだろうが」皮肉めいた事しか言えない自分がつくづく分からない。
が、今日の場合は仕方ないだろう。
だってこいつが言ったんだ、腕は己の命だと。

「なぁに心配?そうならクソ嬉しいけどこの程度なら料理だって問題なく…」

「そうじゃねぇだろ」

「言っとくけど、この腕は何も料理だけの為にある訳じゃねぇ。お前を抱きしめるのも、ナミさんを守れるのも、腕があるから出来た事だろ。脚じゃ出来ねぇ事ばっかだぜ」


女みたいに白くて細い、包帯だらけの腕をガッツポーズさせてニンマリしながら言う。
だがあの傷が痛いことも彼奴の思いも、俺は知ってる。だから苛つく。


「そうじゃねえって。」

「…?」


「だから、そうじゃなくて。お前だって、痛いなら痛いって言やぁいいんだ。そうやって笑って強がるから、だから周りが気ぃ遣わなきゃならねぇんだぞ。無理に笑うな、こういう時無駄な優しさは要らねえから、弱音の1つでも吐いとけ」

分かったな、馬鹿眉毛。
そう言うと、コックは弱々しく無事な腕の方で俺を抱きしめた。


俺に説教すんな、だとか毬藻が偉そうに、とか色々言ってやがるけど全て無視してやった。

そんな奴のもう片方の傷付いた腕を掴み、包帯の血の少し滲んだところにキスを落として。


「苛つくんだよ、こういうの」

「傷口に嫉妬?愛されてんなぁ俺って」


嬉しい、そう小さく言って唇を重ねられる。
まるで甘えるようなすり寄られるような、そんなキスだったから。

いつもは怒りたくなるぐらいの長いキスでも、今日は許してやろうと思うあたり、俺も甘いなと密かに苦笑した。


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男前ゾロ…!!
右っぽくなってくれないけど
男前右好きだからいいんだもん!
たまに男前サンジくんだって
書きたいです。
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