鴎が気持ち良さそうに空を飛ぶ、ある昼下がりのことだった。
サンジが船縁で煙草を吸っていた。いつもそうするように。
ふぅーっと息を吐けば空へ空へと昇っていく煙を見つめながら、太陽の眩しさに目を細めた。
そんな風に一服を楽しんでいる最中、サンジが背後に気配を感じ取って振り返る。
そこにいたのはロロノア・ゾロだ。
おうマリモ日光浴か?なんて声をかけてゾロの様子を見るサンジ。
だがゾロは何も言わず、サンジの口にくわえられた煙草を見て顔をしかめるだけだ。
ゾロの意図する事が全く読めないサンジは自分の特徴的な眉毛のようなクエスチョンマークを浮かべて、首を傾げる。
するといきなりゾロがズンズンズンとサンジとの距離を詰めてきた。
サンジが驚きビクッと肩を跳ねさせるとその顔を見てから、ゾロはサンジの口にくわえられたそれを奪い取る。
動けないでいるサンジを後目に、あろうことかゾロは火が点いたままの煙草をブンッと力強く海へ放り投げたのだ。
「え、え?えええぇぇ!!?オイオイオイテメェ今回は一体どういった用件でこんな行動に出た!?」
「ジャマだったから」
「ジャマ?ジャマって……まだ火ぃ点けてそんな経ってねえのに………」
ガクッと肩を落とすサンジに対して全く悪びれる様子もなく、腹巻きに手を突っ込むゾロ。
そのゾロをキッと涙目で睨んで胸ぐらを掴みサンジは詰め寄った。
「だ、大体!何だよジャマって!お前にとって俺の煙草の、何がジャマだって言うんだ!!!答えろクソバカマリモ!」
「……ギャーギャーうるっせえなぁ、」
「うるせえとは何……ん、んんん?」
熟れたトマトのように真っ赤な顔をしたサンジが怒声を浴びせると、ゾロは眉間に皺を寄せて。
片手は至近距離にいるサンジのネクタイを引き、もう片手はサンジの後頭部を支え、突然のキスをかましていたのだ。
「……………へ?」
「〜ッだから、こうするのに煙草の野郎がいて、ジャマだから捨てたって、そういうことだよ」
「ゾっ、え、ええぇ」
「悪ぃな、大事な煙草、捨てちまってよ。口寂しいなら代わりといっちゃ何だが、使うか?」
そう自分の唇を指差し勝ち誇った笑顔で淡々と言い放つゾロに、もうサンジはお手上げであった。
負けた、勝てない、降参だと口で言うのは悔しいので、それでは遠慮なくといった勢いで、ゾロの唇に貪り付いた。
「ん、ふっ…コック…」
「知らねえぞ、誘ったのはお前だからな?」
「フン…上等、じゃねえか」
「…全く、」
本当に知らねえからな!とサンジは頬を染め挑発的な笑みを浮かべるゾロを姫抱きで抱え上げて、格納庫へと走る。
これから何が起こるかは分かっているナミが、ほどほどにしなさいよバカップル、と毒づいた言葉にさえ、二人は反応する余裕すら無かった。
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違っ…ゾロサンじゃないです、誘い受けです!(言い張る)
若いとはこういうことでしょうか…私にもよく分からん(笑)