:)ロビン誕



さて、とうとうこの日が来てしまったと、ゾロは(珍しく自分から目覚めた)朝からずっと浮かない顔をして海を眺めている。

今日という日は、麦わらの一味である考古学者ロビンの誕生日だ。
夜は間違いなく宴になり、その中で他の仲間達は各々が用意したプレゼントをロビンに手渡す。

その情景を頭に浮かべて、ゾロは尚更浮かない表情をして深い溜め息を吐いた。
ゾロは、この日になっても未だにプレゼントを用意できていなかったのだ。


彼女は花が好きだ。
けれどゾロにはどの花が綺麗なのか、分からない。
彼女は本が好きだ。
けれどゾロはロビンがどんな本を読むのか、よく知らない。


何をあげたら良いのか考えて考えて、いつのまにやら当日を迎えてしまった事実に、ゾロは思わず舌打ちをしてしまう。
そんな中、ルフィの元気な叫びを聴いて船縁に凭れた身体を起こした。


「島が見えたぞ〜〜!!!」


ナミが言うに、この島は店数が多くたくさんの人がショッピングを楽しむ、女にとっては夢の島なのだそうだ。


ここで良い物を何としても見つけなくては。
そう思った矢先、おいクソマリモと呼ぶ胸くそ悪い声がゾロには聞こえた。
まさか、そう悪い予感がゾロの胸を過ぎったその瞬間、虚しくもその予感は的中することとなる。


「買い出し、付き合えよ」





船を島の隅に停泊させて、ゾロは一通りの買い出しに付き合わされた。
ゾロの横を猫背気味に歩く男、コックのサンジは煙草をプカプカふかして大きな大きな紙袋を抱えている。
それはゾロも同じことなのだけれど。


「おい、何で俺がお前と買い出しに行かなきゃならなかったんだ。」

「しゃあねーだろ。ウソップとチョッパーは今日の為に飾り付けの買い出し、ナミさんとロビンちゃんは夢の島でショッピング、フランキーはさっきルフィが壊したドアの修理、ブルックはフランキーと船番、まさかルフィと食いもんの買い出しなんて出来ねえし。」


荷物も多いから暇そうな筋肉マリモがお供にゃあちょうどいいだろ?、と口角を上げて話すサンジのこめかみを、ゾロは我慢できず殴る。
今日をこんな風に過ごすはずではなかった。
こいつがどうしても、と言うから手伝ってやったのにとゾロはムッとして零した。


「暇なんかじゃなかった」

「え、怒ったのそこかよ。てか何か用事あったの?」

「俺はロビンに、まだプレゼントを用意できてねぇ」

「…は?」

「だから今日この島で探そうと思ってたのに、」


はあっと船で吐いたような溜め息と共にゾロの口から発された言葉に、サンジはくわえていた煙草を落とした。
そして血相を変えて、ゾロに怒鳴りかかってきたのだ。


「クッ、クソバカマリモ!何故それを早く言わなかった!!!」

「お前がどうしてもなんて言うからだろうが!!」

「俺のどうしてもよりロビンちゃんだ!こうしちゃいられねぇ、島中の店が閉まっちまう前に早く行くぞ!」


力強くダンッと落ちた煙草の火を踏み消して、ゾロの腕を掴んだサンジと掴まれたゾロ、二人は再び街中へと入っていく。



人混みの中を掻き分けて数々の店を見ていくが、いまいちピンとくる物が見当たらない。
クソっ、と悪態をつきながらサンジは歩を進める。
するとサンジはとある異変に気が付いた。
ん?と気にした時にはもう遅い。


サンジの紙袋を持っていない方の手に、先ほどまで掴んでいた腕の感覚が、無い。
サアっと身体中の血の気が引いた気がした。

この緊急時に、ゾロが迷子になってしまったのだ。


「う、嘘だろ………?」


辺りを急いで見回すも、やはりもう姿は見えない。
サンジは思わずその場にしゃがみ込むが、人混みの中なのですぐに立ち上がって、周辺に聞き回ることにした。


そこら中を走り回って、緑頭の3本刀をぶら下げた腹巻き男を見なかったかと尋ねる。
数々の人に見ていない知らないと言われ、もう一生見つからないんじゃないかとサンジが半ば諦めかけていた時だった。


「アレ、あの子じゃないのかい?」


ふくよかな婦人が指差したそこには、見慣れたゾロの姿が確かにあった。
サンジは安堵して婦人の手の甲にキスを落とし、ゾロの元へと走った。

ゾロがいたのは、ガラス工芸品がたくさん並ぶ小さな工房の前だった。
もう日が暮れ始めている為、ガラスに夕日が差し込みその輝きの美しいこと。


「おいゾロ……す、げぇな………」

「あぁ。ここで選ぶ」


勝手にいなくなったゾロを怒ることも忘れて、サンジもその美しさに見入ってしまう。
ゾロは顎に手を当てて何やら唸りながら、じっくりと工芸品を見て回っている。


サンジも何か良いものはないかと一緒になって探す。
本当に見事なガラス細工だ。

色とりどりの光が店の床を彩って、表の大きな窓から差し込む夕日のオレンジもそれに負けず劣らず綺麗で。
こんなに綺麗なものを貰って喜ばない女の子はいないだろうな、とサンジは心でゾロに親指を立てた。


「おい、コック」


すっかりふわふわしていた意識をハッと取り戻してゾロを見ると、何やら手招きをしている。

サンジがそちら側へ向かうと、ゾロがアレ、と言って指したのは一つの一輪挿し。
形はシンプル。しかし、そのガラスは七色、もしくはそれ以上の色に輝き、見る角度によって様々な色を表した。
すごく、綺麗だ。


「何だアレ……すげぇ綺麗だな…」

「ロビンは花が好きだ。だから、アレなら使えるだろ。アレにしようと思う」

異論は勿論無く、それを買って船に戻ることにした。
割れ物を大事に大事に抱えるゾロを見て、サンジはくくっと笑ってしまった。






「ハッピーバースデー、ロビン!!!!」


皆の祝福の声を合図に、賑やかな音楽が流れ笑い声が響き、楽しげな宴が始まった。

サンジは腹が底なしの船長のおかげで料理の追加に大忙しだが心なしか楽しそうで。


ロビンを取り囲むナミやチョッパーやフランキー、バカな踊りを披露するルフィとウソップ、それにあわせて愉快な音楽を奏でるブルック。
そして中心で笑うロビンを見て、ゾロの口角は無意識にゆるく持ち上がった。


そういえば、と自分の手に持たれたプレゼントの存在に気付き、ロビンが1人になったタイミングを見計らって近付く。

そしてん、と無愛想にそれを手渡すと、ロビンはパアっと花のように綻んだ。
まじまじと一輪挿しを見つめて、笑顔のままこういった。


「この一輪挿しは、みんなの色が入っているのね」

とっても嬉しいわ。


その言葉にゾロは頭をポリポリと掻いて、そうかと一言だけ言った。
ロビンはそうよ、と一輪挿しを見つめて返した。


「おいマリモ、お前一番大事な事、言ったのかよ?」


ゾロの後ろから不意に声がして、後ろを向くとゾロの肩に腕を置いて凭れるサンジがいた。

うるせぇな分かってるよ、とゾロは咳払いなんかをしてみせてから、ロビン、と改めて彼女の名を呼んだ。

「なぁに?」

「あー…、産まれてきて、良かったな」

「えぇ、とても幸せ」

「…おめでとう」

「ありがとう、ゾロ」


言い終わるや否や、たまらずサンジが吹き出した。
どうやらゾロが普段言わないような台詞を述べた事が面白かったらしい。


ゾロが頬を染めて胸ぐらを掴むと、何故か皆が集まって押し寄せてきて、最後に来たルフィが皆をその伸びる腕でひとまとめに抱きしめた。


やっぱり中心では、ロビンが笑っている。


宴は夜が明けるまで続いた。
笑い声が止むことはない。


──────────

ロビンちゃんHPB:)

すっかり遅れてしまった…
しかも話がまとまってない…

ロビンちゃんはワンピの
女の子キャラでも特に大好きです。

あまりサンゾロしてませんが、お許し下さい。

ロビンちゃんおめでとーーっ!!!
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