何故か、唐突に。
心臓がいつもより速く速く脈打って。
息も苦しくて、情けなくも救いを求めて走り出すと、道に迷いやすいと言われる俺でも、そいつの元へは迷わず行ける。

どうしてだろう、分からない。


「何だ何だ、やけに焦って。とりあえず、これで良ければ飲んで落ち着きな」


手渡されるのは、温かなカップ一杯のスープ。
こいつの手から作られる、何の変哲もない、一杯のスープ。

ぐびっとカップに口を付けて飲むと、行儀が悪いなと呆れながら彼は呟く。
お構いなしに飲んだ。


じわり、例えるなら細胞一つ一つに、潤いを与えたような感覚、身体の隅々まで染み渡るそのスープ。

カップを離して見上げると、彼の顔が目に映る。
ごちそうさまは?と、2人の時は優しく微笑む、彼の顔。
目を細めて笑うその顔は、喧嘩している時にも皆でいる時にも、見ることはできない。


もう我慢できなくて、ガタンと立ち上がると、彼から先にぎゅうっと自分の身体を抱き寄せてきて。


「こうして欲しかった?」


耳元で吹き込んでくる。
あぁくそ、悔しい。
さっきのスープはまるで、俺の身体を独占しているように、身体の芯のポカポカは消えない。

そう、スープのせいなんだ。


「好きだよね、お互い」


心臓をぐっと鷲掴みされるような感じ。
違う、俺は知らなかったんだ。
スープにこんな力があるなんて。お前に出会うまでは。


「お前はさっき俺の愛情を受け入れた。否定なんて、させねぇぞ」


あぁ、どうしてなんて。
愚問だったようだ。



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また糖度が高いですね

何だかだんだん
文の書き方変わってきたか…?


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