海の上の真夜中、サンジは1人展望室にて船番をしている。
鉄の絨毯に数々のトレーニング器具、如何にもどこかの誰かさんの趣味そのものだ、なんて考えて静かな室内でクスッと笑った。

サンジは意外に、展望室が好きである。
こんなことを言うと顔に似合わずロマンチストだと笑われるかもしれないが、ここは星や月に一番近い場所、そう思っているからだ。
彼は夜空が好きなのだ。
そして今日も窓から空を眺める。
彼はこれまた意外に、星座にも少し詳しかったりする。


長い長い船番の夜の、少しの間を天体観測に使って、星と星を繋いで何となく満たされた気分に浸る。
そんな時間を過ごしていた最中、不意に展望室へと繋がるハシゴがかつかつ鳴るのを聴いた。

こんな時間にこんな場所に誰が何の用だろう。
サンジは入り口をただただじっと見つめてその人物の登場を待つ。
すると現れたのは、月明かりに照らされてやんわり光る萌葱色の頭。
続いて眠そうな顔にがたいの良い身体、手には毛布。
次々に姿を見せて、全てが見えたとき目の前にいたのはゾロだった。


「驚いたな、こんな時間にお前が何の用だ?」

サンジの台詞に答えず、目を擦りながら隣にどさっと腰掛けたゾロは、少し遅れて、眠れねぇと返した。
持ってきた毛布にくるまって、くあっと大きな欠伸を1つして、サンジと同じように夜空を眺める。


「昼間に寝過ぎたんだろ、バカマリモ」

「昼間にどんなに寝たって、夜になりゃいつもは寝られる。今日は寝られなかった」

何でだろう、とうとうとしながらもはっきり喋るゾロは、確かに寝たいのに寝られない、そんな感じだ。
その様子を見ていたサンジは、寝るのを好むゾロがこんな調子だと変に可哀想だと思えてきて、どうにかならないかと考えた。

とりあえず体温を上げさせてみよう、と肩を抱いてみた。
いや、ちょっといいムードだからくっつきたいなとかそんな下心はあったりなどしない、これは体温を上げる為だと誰にでもなく心で言い訳するサンジの手に、ゾロは黙って従う。

それから、2人夜空に浮かぶ月と星と、真っ暗い海を見て、それでもゾロは寝られないようだった。
どうしようか、そう考えた時サンジの目に映ったのは、綺麗な月。
そうだ。サンジは自分の記憶から引っ張り出されたある1つの方法を思い付いた。


「そうだゾロ、子守歌、歌ってやろうか」

「子守歌ぁ?いい、何かガキみたいじゃねぇか」

「このまま寝られず朝を迎えるの、辛いと思うぞー。試してみようぜ、俺がガキんときによく歌ってた歌だ」

ゾロは気持ちよく迎える朝を選んだらしく、こくっと一度頷いた。
それを見たサンジは、すうっと息を吸って、ゆったりと、低い歌声で、歌い始めた。


それは、海を旅する船乗りへ向けた子守歌。
ひどく落ち着く、心地よい歌だった。
月明かりが先程よりも、柔らかく差している気がした。


サンジがとん、とんと歌に合わせてリズム良く優しく優しく肩を叩いてやれば、あれだけ頑固だったゾロの気だるげに開いた瞼が、ゆっくりゆっくり落ちて。
歌が終わるのとほぼ同時のタイミングで、ゾロは寝息を立てて子どものように眠っていた。
サンジの肩口に、頭の重みを預けたまま。


その様子にほっと一息ついて安心したサンジは、もう一度月の光る空を仰ぎ見た。
そして、幼かった自分を思い出し、自分が何故夜空が好きなのか、少しだけ分かったような気がした。


「おやすみ、」

隣で夢の世界へと旅立ったゾロの頭をくしゃっと撫でて、少しの間だけ、サンジも月明かりに包まれて、目を閉じた。


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子サンジのキャラソンネタ

あんまサンゾロしてなくて
すみません…!

一回書きたかったんですよー

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