ある時ふと、どうしてもゾロに触れたくなった。
こんな時俺はいつもなら、くだらない喧嘩をふっかけに行くのだが、でもそうじゃなく、たまに恋人らしい触れ合いをしたい時もある訳で。


まぁ出来ることなら俺は、24時間ずっと、ゾロといちゃいちゃしていたいもんだが、当のゾロは絶対に時間の無駄だとか言うに決まってる。クソ。


だから、そんなゾロに俺は、1日のほんの少しだけを使って、このどうしようもない感情をぶつけるべく、今もゾロに近づいている。


「ゾロ」

まずは一言声をかけて、ターゲットの注目を俺に向かせる。
相変わらずの仏頂面で、何だよクソコックと悪態を吐く彼を、今度は強引に壁へと押し付けて逃げられないように押さえる。

ダンっと壁が音を立てるが、ゾロに痛みを感じさせないように押し付けるように、一応気は使っている。
何しやがるコラ、と眉間に更に皺を寄せるゾロを見つめる。
うん、怖い。


だがここで怯んではいけない。
そんな迫力にも負けずゾロの両頬を手で包み、このムスッと閉じられた唇に一度ちゅっと軽めのキスを落とす。

するとゾロは驚いて、口をぽかっと開けて黙って俺を見る。
その顔がたまらなく可愛いけど、その事は敢えて口には出さない。
その代わりに、演技なしの切羽詰まった声で、名を呼ぶ。


「…ゾロ、」

「ッ…!」


そしてゾロの開いた口に、再び唇をぶつける。
ゾロの口が開いているのを良いことに、口内に自身の舌を侵入させる。

するとゾロはんんーっ!と言葉にならない怒声を上げて腹に膝を打ち付けてくる。とてつもなく痛い。

ガスガスと何度か打ち付けてくるが、それでも俺は攻め込む舌を引かない。
そうすると今度は、鳩尾に拳を勢い良くめり込ませてくる。
正直地獄の苦しみである。


だが男サンジ、そんな攻撃にも怯まずゾロを舌で翻弄し続ける。
するとどうだろう、ゾロの身体からみるみる力が抜けていくのだ。


「ん、う、ッ…」

抵抗も無意味だと覚るのか、壁についていた腕を俺の腰に回してくる。
ちくしょう、どうしてこんなにも可愛いのか。
素直に受け入れることにしたのか、甘い声も聞こえてくる。
こいつのこういうところが、俺は大好きだ。


ちゅ、ちゅと甘い甘い音が脳内に響いて幸せな時間も、やはり長くは続かない。
ハッと我に返ったゾロが、ビュッと目にも止まらぬ速さで拳を俺の顎へと飛ばす。
ゴスっという音と共に綺麗なアッパーカットが決まったとき、俺の至極幸福な時間はあっさりと幕を閉じてしまうのだ。


「いってェ!てめぇ舌噛んじまったじゃねぇか!」

「うるせぇ黙れ黙れ黙れ!ふざけんな変態アホコック、これでもくらえ!」


顔を真っ赤に染めて怒るゾロ、振り上げて今にも俺に殴りかからんとする腕を掴んで引っ張って、ぎゅうっと抱きしめてやると、奴はもう限界である。


「…黙って愛されろ、バカマリモ」

「う、うぅ、」


引き寄せた耳元で吹き込むように言ってやると、とうとう観念したらしく、ぎゅうううっと骨が軋むんじゃないかというぐらいの力で抱きついてきた。

きっと緊張で力が入り過ぎているのだ。
嬉しいけど、ちょっと、いやかなり、苦しい。


「ちょ、ゾロ、苦し」

「ふざけんな、バカアホ眉毛。」


そう言いつつも腕の力を抜かず、今にも爆発しそうなぐらい真っ赤に肌を染めるゾロ。
なんだ、こいつ、俺のこと大好きじゃん。
やべ、クソ愛しすぎる。


「ゾロ、大好き」

「…知ってる」

その後も、昼間ということも忘れてくっ付き続ける俺たちは、1日のほんの少しだけを使って、計り知れない程の幸せに浸る。


俺だけでなくゾロもちゃんと浸ること、これが、一番大事だ。


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どええええ甘いっ甘い!
があぁ甘い!

違います、ヤンデレじゃないです
照れボコリ症なんです、ゾロくんは。


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