るんるんと心躍らせ、サンジは夜のキッチンにてゾロの帰りを待つ。
まあ帰りといっても、ゾロはバスルームに行っているだけなのだが、サンジは待っている時間の一秒も惜しくて仕方がないと言った感じで。
だがそれもそのはず、今日は珍しくゾロから、一緒に酒を飲もうと誘ってきたのだ。
「待たせたな」
のそっとキッチンへ戻ってきたゾロは僅かに上気していて、髪や肌も少し濡れて、ちょっとだけ、いやかなり、色っぽい。
そんなゾロに生唾を飲み込むと、それを見透かされたのかゾロがふっと笑う。
サンジはそんな笑みすら艶めかしいと男相手にそう思う。
「あ、き、今日街で見つけたいい酒があるんだけど、それでいい?」
気恥ずかしくなって昼間手に入れた酒をゾロに手渡すと、その酒をまじまじと見て上等だな、とにいっと笑って言った。
それが嬉しそうで、高い酒だったけど奮発して良かった、とサンジは安堵した。
「じゃ、飲もうぜ。注ぐからコップ寄越せ」
テーブルを挟んでサンジの向かいの椅子にどかっと腰掛けてゾロはとくとくと酒を注ぐ。
サンジはというと、未だにゾロの風呂上がり姿にどぎまぎしている。意外に初心なのだろうか。
コップを持ち乾杯、とゾロが言うとサンジもわたわたとコップを持ち上げ、コツンとぶつけた。
そして両者ぐいっと豪快に酒を飲み、他愛のない話をしながら2杯、3杯と酒を楽しむ。
だがサンジはあまりアルコールというものに耐性がなく、すぐに酔っ払ってしまうが、ゾロはそれを知っていて飲め飲めとサンジのコップに酒を注ぎまくる。
そして案の定、程なくしてサンジはべろんべろんに酔っ払ってしまった。
「俺ぁ飲むじょ〜、じょろもっと注げ〜!」
「わあったよ、今日はよく飲むな」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるサンジにゾロが素直に酌をすると、とても幸せそうにサンジはげらげらと笑って言う。
「あったりまえよぉ、じょろがさそってくれたしなぁ!」
「あぁそう」
酔っ払いをあっさりとあしらうゾロは、意外に悪くないというような顔で、相変わらず酒を注ぐ。
サンジは注がれるがまま酒をぐびぐびと飲むが、当然だが限界がきたようだ。
サンジは突然ばたーっと突っ伏して、じょろあいしてるー!と叫んだと思うとすぐ後に寝息が聞こえた。
潰れたな、目を見開いた後にふうっとゾロは息を一度吐いて、立ち上がってコップを流しに持って行き、サンジの隣へと今度は静かに腰掛けた。
すっと髪を撫でるとランプの灯に反射して金色が綺麗に映える。
テーブルにくっつく顔へと垂れる髪を耳にかけてやり、彼の特徴であるぐるぐるとした眉毛をその形通りになぞってみた。
くすぐったいのかサンジはんん、と少し唸る。
その様子を見てゾロはくすっと笑って、眉毛に口づけた。
それから瞼、鼻先、頬、耳にキスを落とす。
その部位は何処も酒のせいで赤く染まり、熱を帯びていて熱い。
ゾロは明らかに面白くないといった表情で、サンジの鼻をぎゅっと力強く摘んだ。
んがっ、と苦しそうな声をあげたが、サンジは起きなかった。
「最初は俺見て赤くなってたくせに、結局これかよ」
ちゅー、と長いリップ音が数回キッチンに響いた後、ゾロは瓶に入った残り少ない酒を飲み干して、ざまあみろ、と悪態を吐いてサンジの横で眠りについた。
ぐっすり眠るサンジの首筋には、酒のせいで赤い身体よりさらに赤い箇所が何箇所か残されていて。
ゾロは至極満足そうにもうすでにいびきをかいている。
してやったり、そんな表情だった。
次の日、サンジはチョッパーから虫さされによく効く薬を渡されるまで、この跡には気付かないのである。
─────────
酔っ払いサンジくん
うちのゾロはやきもち妬きですね
ざまあみろ、が何に向けて言われた言葉なのかは、あなたの妄想次第。