1203 1627
『サンセットラヴァー』
ゾロ、ちょっと付き合ってくれ。
夕方。他の生徒たちがパラパラと帰り始めた頃、自席でうつらうつらしていたゾロのところにサンジがやってきた。
付き合うって、どこに、と訊ねるゾロをサンジは無理やり立たせ、ぐいと腕を掴んで走り出す。
何か焦っているようなサンジの様子に疑問を抱きながらも掴まれた腕の体温が心地よくて、引っ張られるままにゾロも走った。
赤や黄色の木の葉が落ちる街道を駆け抜けて丘を登る。
登りきる頃には二人ともはぁはぁと息を切らしていた。
腕を掴んだまま、サンジが振り返ってへにゃりと笑う。
「へへ…どうしても陽が沈む前にここに来たかったんだ。」
そう言うサンジの金髪が夕日に反射してきらきらと輝くのを見てゾロは目を細めた。
好きだなぁ、と思う。調子に乗るので口には滅多に出さないが。(サンジの金髪はゾロのお気に入りの一つだ)
「ほら、ゾロ。もっとこっち来てごらん。」
ぐい、と引っ張られてサンジの肩にゾロの肩が触れる。
そのまま肩を抱き込まれてゾロは頬が熱くなったのを感じた。
「見て、陽が沈む。」
反論しようと開いた口は、サンジがそう言って指で示した方向を見たことによって開いたまま塞がらなくなってしまった。
雄大な太陽が、水平線の彼方へ沈んでいく。
太陽を飲み込みつつある海は、その色を美しい橙色に変えた。
街中の紅葉した木々と相まって、視界一面が赤く染まる。
「す…げぇ…」
思わず溜息が出た。
いつも見ているはずの街が、こんなにも美しかっただなんて、知らなかった。
「おれも最近知ってね。学校帰りにたまたま通りがかったら、綺麗だなぁって思って。これを見た瞬間、真っ先にゾロに見せたいなって思ったんだよ。」
嬉しそうに真っ赤な街を眺めるサンジの顔も、赤い。
今度は、サンジのことを綺麗だと思った。
また、サンジのことが好きになる。どうしようもないくらいに。
「ッ…ん、」
ぐい、とサンジの巻いているマフラーを引っ張って、唇を押し付けた。
サンジの瞳は一瞬見開かれて、すぐに閉じられた。
ぎゅう、と手を握られ、ゾロもしっかりと握り返す。
一度離して、もう一度唇を合わせてから、ゾロはサンジの肩に思いきり頭突きした。
「なぁに、どしたの?」
くすくすと照れ臭そうに笑うサンジの声は嬉しそうだ。
かあぁ、と自分の顔に血が集まるのを感じる。
ますますサンジの肩に顔を押し付けてしまう。
「あは…ゾロ、おれもだいすきだよ。」
「うぅ…!」
(ちくしょう、ばれてる…)
すきだすきだと叫びだしたい想いも、すきだと言ってほしいという想いも。
今のキス一つで伝わってしまったらしい。
見つめてくるサンジの視線がとろりと甘い。
「また、来ようね。」
「……おぅ。」
返事をする自分の声はひどくか細く頼りない。
夕日が沈んで辺りが真っ暗になるまで、ゾロは顔もあげられずにただサンジの手を握り続けていたのだった。
END
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煌様の50000hit記念フリリク企画に僭越ながら参加させていただきまして…っ。
『高校生サンゾロ、放課後デートでいちゃいちゃ』
というリクエストの基、煌様が書き上げて下さったお話です。
ぐあああ可愛いですねっ!!!
ちょうど高校生ぐらいの甘酸っぱさがくすぐったい!
頭突きゾロとへにゃり笑顔なサンジくん、想像しただけでもう…。
あと、情景描写がすごく素敵だと思いました。
夕陽と紅葉で海や街が色づく、一度でいいから観てみたい景色ですよね…。
煌様、本当におめでとうございます!
素敵なお話をありがとうございました!