歯車は揃った

朱崎未来は走っていた
異形の化け物達に追われ、友人一人が襲われて。
捕まったら死ぬ。それを目の当たりにしてしまったから

謎の声に助けられたのも束の間で、道を埋め尽くす程の化け物が新たに現れた。ここまでかと思ったその時、二人の男性が助けてくれたのだった


「ええと、その…私は、」
混乱と衝撃に言葉が続かない私に、黒髪の男の人は大丈夫だと、後ろに隠れているようにと言う
そして金髪の人と協力して化け物を倒していたその時だった


「お、なんだなんだ
楽しそうなことになってんじゃないか」

また別の声がして顔を上げる
銀色の髪をした人がビルの屋上から地上へと着地した所だった。…あんな所から?どうなっているのだろう。しかも今の衝撃はなんだったの?

”久世蓮夜”と呼ばれた男は朱崎を値踏みするように見ていた

「つい最近拾いもんをしたばかりなんだがな…
美しい花は幾つあってもいいもんだ。攫っちまうか」
「…っ!?」
自分の事だと瞬間に察知した朱崎は恐怖に震えた
それを庇うように金髪の人が目の前に立つ

「誰が貴様なんかに…!
”彼女”だって貴様が無理矢理ゲームに引き入れたんだろう!」
「おいおい…人聞きの悪ぃこと言うなよ
俺達はアイツが巻き込まれたのを助けてやったんだ」
「結城さん!落ち着いてください」

激しい怒気を滲ませながら殺気立つ二人を視界に映しながら、朱崎未来は急速な目眩と暗くなる目の前に抗えず、身を任せていった



「…で?どういう事ですか久世さん」
「だから新入りだよ犀香
お前と同じように巻き込まれてプレーヤーになった上玉がいてな」
「そういう事じゃなくて!!
人を呼び出しておいて、何で気の向くまま行動した挙句、秩序の騎士団(オーダーナイツ)の結城さんと戦闘してたんですか!APPLE☆MINTのカナさんまで巻き込んで!」
「成り行きだよ、成り行き」
「…もう、懲りないんだから
昨日だって暴れてたのにまだ足りなかったんですか?」
呆れたように犀香が言うと久世は詰まらなさそうに恨み言を呟く
「…最近誰かさんが水を差すこと覚えたからな」
「…久世さんがやり過ぎるからでしょ」

「久世さんも犀香さんも、それ位にしてください。お互い様っスから」

楷が呆れているのを隠さず言うと久世も犀香も黙った。
クランマスターであり絶対的な王である久世蓮夜と、平和主義(ただし、割と脳筋)で調和を重んじる金木犀香の言い合いの落とし所となるのは、冷静でクラン一の常識人である早乙女楷ただ一人なのである。
それは最年少の楷が実力主義で奔放なメンバーの集まる”インフェルノ”のまとめ役となり得ている所以でもあった

「そっちは無事終わったんだろ?」
「ええ、まあ
ハルさんと犀香さんいたし。源さんそっち行っても案外余裕でした」
「そりゃ優秀、優秀!
犀香もよくやったな」

わしゃわしゃと頭を撫でて褒める久世に犀香はされるがままにその手を受け入れる

「(普段文句は言う割に、こういう時は素直なんだよな、犀香さん)」
「何だ、楷も撫でてやろうか」
「いや、結構っス」
「楷君は私が褒めてあげる!」
「やめてください」
「お前はダメだろ」
「犀香、これ以上楷君困らせないでよ」

楷、久世、真嶋の順に止められ犀香は拗ねたように口を尖らせた。源次郎に至っては言葉にはしないものの、黙って首を振っている

…そんなにダメ?

むむむ…と何故か久世を睨む犀香に、楷はポンと自分よりも低い位置にある頭に手を置いた
「そういうのはとびっきりのご褒美にとっといてよ犀香さん」

そう言うと犀香はポカンと口を開け呆けたまま楷を凝視する


「…楷君、ホストにはならないでね」
「は?
呆けた後に言う事がそれ?」
「…楷君ホストになったら多分、みんな本気で好きになっちゃうよ!久世さんお客さん取られちゃうかも」
「お!楷!ホストになって俺とNo.1賭けて勝負するか」
「しないし。絶対ならないっスよ」


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