ヨコハマ ギャングスタア パラダヰス 中

―PPP
敬愛する芥川先輩に報告の電話を入れようとしていたところである。もしかして先輩から激励のお電話では…と期待と裏腹に画面に映し出された名前は一年ほど前に首領から直々に面倒を見るよう仰せつかった男の名である。
――早水圭介
なんでも、6年前まで横浜沖を縄張りにしていた海賊の構成員であったらしいがマフィアと抗争に陥り敗北。その手打ちとして幹部を差し出させた。というのが樋口独自で探った顛末である。
幹部というだけあって頭もキレ、機械方面にはめっぽう強いものの個人の戦闘能力としては護身程度である。
計画では探偵社を監視後、人虎を確認しこの裏路地にて芥川先輩の援護射撃という手筈だった。それが何故…
しかし不測の事態が起こったにしろ着信があったのだ。目の前の探偵社の人間はこの路地裏に疑念を抱きつつも未だ私自身に疑いは向けていないようであった。
「はい。何かありましたか
はあ!?何故バイクが?それは貴方の落ち度で…」
どうしたらみすみすバイクを盗まれるなんて事態になるのか。思わず声を荒げるが更に厄介な人物まで逃がしたらしい。こんな者がマフィアと渡り合った組織の幹部?冗談では済まない。
「最悪、貴方が間に合わずとも先輩なら問題ないでしょう。しかし逃したことは問題ですよ」
普段の反抗的な態度も含めて先輩に罰してもらおう。そうだそれがいい。しかし機械越しに男は芥川先輩ですら敵わないかもしれないと言う。
「ふざけないでください。先輩に敵わないものなどいない」
ああ!苛立つ
通話を切った後も苛立ちは収まらない
…しかし。もう標的は袋の鼠。逃げ場はない
芥川先輩の思惑通りにこの計画は成功する。させてみせる。
「芥川先輩?予定通り捕らえました。これより処分します」
樋口は躊躇なく引き金を引いた

数分前
太宰は探偵社のソファーに寝ころび液晶画面に表示される赤い点を追っていた
まるで携帯ゲームをしているかのようなだらけた様に国木田は憤るも目の前の男はどこ吹く風といった様子である。
太宰は赤い点の行きつく先を思い浮かべ上機嫌に歌いだす
脳裏に過るのは愛しい彼女の姿である。さあて、邪魔が入らなければ今頃…






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