コンクリートから反射された熱を受けて周りが一番暑くなる時間、午後2時。
規則正しく植えられた木からは、蝉の大合唱。
木の陰になっているベンチにケンジと一緒に座って、スーパーで買ったアイスを食べながら、ああ、今青春しているなぁ。
なんて一人で考えて幸せに浸っていた。
「オレ達、いつまでも、ずーっと、一生親友だよなっ!」
調子に乗って、本日3回目の確認を、ケンジにとった。
もちろん答えは分かりきっている。
当たり前だろ。って。
笑いながら返してくれると思った。
でも、答えは初めて聞くものだった。
「オレ、もうお前と親友やめる」
蝉の声が、一瞬聞こえなくなった。
冗談だと思った。
「は?」
冗談だと、もちろん嘘だと思っているけど、思わず間抜けな声が出てしまった。
帰ってくる答えは同じだった。
「藤田はオレに対する依存が強いから、嫌だ。もう親友やめようぜ」
ケンジは食べきったアイスをゴミ箱にねじこんで、一人で歩いて行ってしまった。
もちろんオレは引き止める。
「ちょっ!それ、どういう意味だよ!訳わかんねぇよ!」
腕をつかむと、動きは止めるもののオレの顔を見ようとはしない。
「何かオレ、悪い事したか?ケンジの気に触る事、したか?」
つい3時間前までは、親友でいる事を当たり前としていたのに。
どうして急に変わってしまったんだろう。
ケンジは初めてオレと目を合わせて、こう言った。
「いつまでも?ずーっと?一生?ゴメン、オレは無理」
それだけ言って、また逃げようとする。
でも、逃がさない。
「待てよ!オレの事嫌いなのか?ウザいのか?」
急すぎて、ショックすぎて、回らない頭からケンジに言う言葉を叩きだす。
親友であることを拒絶されたんだ。
嫌いに決まっている、ウザいに決まっている。
でも、ケンジの口から出たのは予想外の一言だった。
「嫌いな訳無いだろ!ウザい訳無いだろ!?お前はオレの親友なんだから!だからオレはお前の親友を止める!」
そう言って、腕をふりきられた。
意味わからねぇ。
尻餅をついたオレを、蝉が笑っていた。
世界は矛盾で出来ている
(オレがオレから藤田を守るためには、こうするしかなかったんだ)
10.0406 皐月様
選択お題『世界は矛盾で出来ている』
立場逆転パロ
...あとがき...
私のようなゴミ虫がこのような素敵な企画に参加してしまって、本当に申し訳ございません。
作品の解説をしますと、狼男のケンジは藤田が大切で大切で仕方がないので、狼男の自分に傷つけられないように、藤田との“絶交”を選んだわけです。
参加させていただき、ありがとうございます。
それだけで私は満足です。ハイ。